もしも夢で言えたなら【短編集】 (ページ16)

今日:1 hit、昨日:24 hit、合計:52,533 hit

存在位置：緑ページ16

暑い暑い季節。
蝉もよく鳴き陽炎が出るほど照りつける太陽。
じわじわと肌を焦がしていくような紫外線、そして温度。

37にしてこんなくそ暑い外に誰か出るというのか。
お昼前だというのに冷房を適度な温度にしコントローラーを手にゲームをしている僕。
何とも難しいもので中々先に進まず、今も映るのはGAME OVERからのCONTINUEの文字。

う"ーと小さく唸りながら少し休憩しようとコントローラーを握る手の力を緩めたときだった。

｢おーつーいーちーさん!｣

｢うおっ!?｣

後ろからかなりの衝撃を受け胡座をかいていた自分は前に飛び出そうになる。
来たか…そう思って後ろを向くとニコニコと笑うAちゃんがいた。

｢Aちゃん…僕の歳を考えろっていつも言ってるでしょうが｣

｢おついちさんはまだまだ若いよ、だから大丈夫！｣

あらそう…と軽く流し、テレビに視線を戻す。
弟者と同い年のAちゃん。
兄弟の(特に弟者)の幼馴染で、3年前に知り合った。
まぁ彼女とは歳が一回りも違うのだが、情けないことに僕はAちゃんに惚れてしまったのだ。

でもAちゃんの方が全然若い。
これからまだ自分より若い男性の出会いもあるだろう。
だから僕はこれを伝えるつもりはないし、表に出すこともない。

僕は仲のいい叔父さん的存在でいい。

そう考えていると、いつの間にか僕の背中に寄りかかっている彼女を感じた。

｢ねぇ、おついちさんはさ…｣

急に静かに話し出すから、CONTINUEに○ボタンを押そうとした指を止めた。

｢なに?｣

｢誰かと付き合おうとか…考えないの?｣

そんな言葉に、僕はドキリと心臓が脈打った。

｢…そうだね、今の生活に満足してるし、僕ももうアラフォーだからねぇ｣

なんて、冗談交じりに言って、彼女の顔を見る。
そのとき、思わず声が詰まった。
Aちゃんがあまりにも真剣に、それに不安を混ぜた表情をしているから。

｢…おついちさん｣

縋りつくように僕の腕に手を添えた。
半袖から出ている腕からは、直に彼女の手の温度が伝わった。

僕の心臓も、珍しくドキリと激しく脈打つのがわかった。

(続)