#35 野坂何某の前仕込み ページ35
また別の日。珍しく監督の具体的な指示の元、リレー形式で瞬発力を磨く特訓が始まった。
短い距離とはいえ永遠と走らされていると疲労が体に蓄積していくのを感じる。
ようやく監督が終わりの合図を出し、それぞれがぞろぞろと宿舎に戻ろうとすると、風丸が待ったをかける。
「待ってくれ皆。すまないが、皆にはこれから別の特訓をしてもらいたいんだ」
「えぇー!」
ブーイングが飛んだが、普段真面目な風丸がこんなに真剣に頼んでいる、何か意味があるんだろうと一星を除いた全員が残った。
Aはススス…と近寄って耳元でこそこそと聞く。
「誰からの指示だ?」
「やっぱり気づくか?」
「当たり前だ。どうせ野坂とかからの指示だろう」
「正解」
スピニングウィンドを作る、という特訓だがこれはどう見てもグリッドオメガを作る前の段階の特訓だ。
グリッドオメガなんて戦法を使ったのは野坂のみ。
風丸に指示した理由はよく分からないが、まあつまりはそういうことだろう。
「野坂も面倒な指示をする」
「野坂の事だ。何か考えがあるんだろう」
「…それもそうか」
「それで、有人は何をするつもりなんだ?」
「俺は一星と…バックにいる存在との繋がりを調べるつもりです」
自由時間に差し掛かった頃、Aは有人と電話で連絡を取っていた。
危ない橋を渡ってしまいそうでひやひやするが、ツテがあるらしい。
「危ない事はしてくれるなよ」
「義姉さんが心配するような事はありませんよ」
「そう言って一星に返り討ちにされた奴はどこの誰だったか」
そう言うと有人はぐっと言葉に詰まったが、すぐに真面目な声色で告げた。
「引き続き、一星には気をつけてください」
「それはもう分かったから、他の奴らを巻き込むんじゃない」
西蔭なんてあまりにも不憫だろう、と少し叱ると有人はちいさくすみません、と謝った。
「イナズマジャパンが心配か?」
「…それは、当然です。あいつは、あいつらはいい奴すぎる」
「だろうな」
不安なはずだ。キャプテンである円堂が一星に好意的なら、後輩はもちろん同学年のメンバーだって距離を測りかねる。
その隙を突かれないか、有人は心配しているのだろう。
「義姉さん?」
「…大丈夫。お前の分まで、ここを守ると誓おう」
だから、そんなに心配しなくていい。
そういうと、電話越しに少しの笑い声が漏れて聞こえた。

118人がお気に入り

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
飼育員(プロフ) - 桜餅さん» 嬉しいコメントありがとうございます!イラストまで褒めていただいてモチベーション爆上がりです🥲🥲恋愛要素はどうにかこうにか入れていきますので楽しみにしてくださると嬉しいです🫶 (12月29日 21時) (レス) id: bd88f15959 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅 - めちゃ好きですこの作品に合わせてくれてありがとう神様(?)恋愛要素もとても楽しみにしてます!頑張って下さい!!…あ、言い忘れましたがイラストめっちゃ上手いし可愛いです!! (12月28日 21時) (レス) id: 8a80763ee6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:飼育員 | 作成日時:2024年11月23日 19時