2:ようこそ松下村塾へ ページ2
｢私が晋助様にですか？｣
一応武道などを心得てはいるが剣の筋がいい晋助様には到底勝てる気がしない。
｢松陽。流石に｣
｢銀時、これは2人で解決させるのが良いのではないですか｣
松陽様のいい様に全員が押し黙る。
｢分かりました。勝ってみせます｣
そう言いきった私の頭を松陽様は優しい笑顔で撫でる。
｢一本勝負です。いいですか？｣
私はその言葉に頷く。武家の女に二言はない。
晋助様も渋々といった様子で軽く頷く。
｢はじめ｣
勝とうとは思うが私が兄達から学んだのは主に守りの形なので防御の方につい回ってしまう。
｢そんなんじゃ勝てねぇよ｣
ひたすら晋助様の攻撃を流していくだけで約1時間ほど。限界だ、そろそろ体力的に。
｢十分です｣
｢松陽様、まだ勝負が｣
自分でも限界がわかっていたが勝負は勝負だ。結果が出るまでやり続けるのが通りというものだろう。
｢もう限界でしょう。晋助を相手によくここまで耐えました｣
松陽様の言葉はとても優しい、しかしそれがとてつもない悔しい。
｢晋助、君の剣筋には迷いがあった。彼女を傷付けそうなのが怖いですか｣
｢べ、べつに｣
｢そう、それなら｣
そう言うと松陽様は晋助様の頭に拳骨を食らわせた。
｢な｣
｢それは貴方が手を抜いたということです｣
これはお仕置きですよ。
でもその拳骨さえとても優しいもので晋助様がこの方の元にいることに納得がいった。
床に沈んでいたけど。
｢松陽様。遅い時間までお邪魔してしまい大変申し訳ありませんでした｣
｢いいえ、気にしないでください。晋助、彼女を送っていきなさい｣
門まで送りに来てくれた松陽様、銀時様、桂様に一礼して微笑む。
きっと会うのは最後だろう。
私は両親にも高杉家の方々にも黙って出てきてしまった。
｢松陽様、貴方はとてもお強くてお優しい方なのですね。晋助様をよろしくお願いします｣
こんな人が傍についていて、心強いであろう2人の素敵な仲間がいて、晋助様はきっと幸せなのだろう。
｢勿論です。あ、Aさん。私のことは松陽様ではなくて松陽先生とでも呼んでください｣
｢え？｣
｢明日からよろしくお願いします｣
目を思わず見開く。
驚いたのは私だけではない。
｢はい、よろしくお願いします！｣
両親を説得するには骨が折れそうだがお兄様達がきっと助けてくれるだろう。
だって、こんなに素敵な居場所を見つけたんだもの。
3:気に食わない女→←1:はじめまして。私が晋助様の許嫁です
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