ルーツメイト 第一章 〈A〉

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「ちょっとテヒョンさん。一応感想くらい言ったらどうなの」

「ん？」


ぐつぐつぐつ

話しかけると
目の前のキムチ鍋から外した視線をぴたりと私の顔に固定する

その間もせわしなく動く口をモゴモゴ言わせて何かを訴えようとしてくるから
見たくもない具材が見えて思わず顔をしかめた


「もの食べてる最中に話さないでよ」

ごくん、

「お前が聞いてきたんだろ」


それはそうなんだけど。
そんな急かしてないのに。

ただこっちは味付けが自己流だから口に合うか気になって


「うまいよ」

「あ、そう。それならよかった」

ほっ

こうして料理(といえるか分からないけど)を振る舞って初めて気づいたけど
私は大学に入ってから一度も彼氏というものを作れていない。
つまりこうして自分の味付けを誰かに振る舞うのはずいぶんと久々のことで。

テヒョンの前に鍋を置いた瞬間から
実は少し緊張していた


「辛さがちょうどいい」

「ほんと？良かった」

「俺辛いのあんま得意じゃないから」

「…そうだったんだ」


そしてもうひとつ気づいた事。

私とテヒョンの仲は結構長いけど
こうして私の家で私の作ったものを振る舞うのは実は初めてだったりする。


休日とか学校帰りとかにうちに寄って
お菓子食べながら漫画読んだりDVDを観たり
そういうのはよくあったけど。

なんでだろ、と首を捻って
あぁそうだ、と思い当たる

過去に何度か誘ったことはあったんだ
そのまま夕飯食べてけば、って。

でもそのたび何らかの理由で断られて。
だから何故今違和感があったのかわかって
私は一人スッキリした。


「そういえばテテとご飯行くと割と同じメニューでお互い迷うもんね」

「ん？」

「味の好みが似てるんだって今気づいた」

「今更かよ」


私の言葉にテヒョンは真顔で返してきた
そんな呆れなくても

しばらく二人とももぐもぐと口を動かして
豚肉のコクを堪能する。


「…なんかさ、」

「ん？」


相槌を打ちながらも
またばくりとニラと豚肉を口に運んでいくテヒョン。
私は気にせず喋り続けた


「変な感じだよね」

「？」

「うちら結構付き合い長いのにさ。こうやってどっちかの家でご飯食べるの新鮮だなって思って」


何気なく言った一言だったのに
テヒョンはじっと動かなくなる

どうかしたのかな？と目の前で手を振れば
やっと口を開いた。


「…A、気づいてる？」

「ん？なにが」

「Aから俺をどこかに誘ったのってさ、今回が初めてなんだよ」

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