掴みたいもの 【兵頭十座】

episode.28 ページ29

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ーその夜、一本の電話が入る。


『もしもし？はい、はい...え！！光良が...はい、はい、分かりました。』


『...おばちゃん？どうしたの？』


『Aちゃん、急いで支度して！お父さんが___』


『...』


嘘だと思いたかった。


夕方、お父さんは空港へ向かう中、交通事故に遭って病院に運ばれた。


意識不明の重体で運ばれて、私とおばさんが病院に着いた頃には...もう...


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ーお父さんのお通夜が終わった日、私はおばさんにあるDVDのディスクを渡され、そのディスクをおばさんと一緒にリビングでみた。


そこには、お父さんの姿が映っていた。


『お父さん...』


お父さんが抱いてる小さな赤ちゃん、もしかして...


『Aちゃんが生まれた頃よ。光良、必死であなたを育ててた。大変そうだったけど、今まで見た中で本当にいい顔してたのよ。』


『お父さんが...』


幸せそうに私に笑いかけるお父さん。


その笑顔があまりにも優しくて、私に対する愛を痛いほど感じた。


『どんな子に育って欲しい？光良。』


『そうだな...好きなものにまっすぐ向かっていってほしいな。
どんなことでもいい。
叶えたい夢を見つけたら、それに向かってまっすぐ進んでいってほしい。
そしていつか、もし好きな人ができてその人と結婚して、子供ができて...幸せに暮らして欲しい。
その姿を見守り続けられたら、最高に幸せだよ。』


お父さん...


私は涙を止めることができなかった。


抑えようとしても、ボロボロ零れ落ちてくる。


お父さんは、私のことをこんなにも愛していてくれたのに、


私は...なんであんな酷い事言っちゃったんだろう。


お父さん...ごめんなさい。


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