プロローグ１ ページ2
『ねえねえ、これ、なんだと思う？』
「うーん？形はぶどうだけど、なんかグルグルしてるよな。食べてみろよ、ユキ！」
『え？私が？…まあ、味が気になるし、いいけど。死にかけたら、ばーちゃんとこまでよろしく！」
「任せとけ！」
10歳にも満たないほどの少年と少女は、木になっていた実を見つけた。先に見つけた少女が食べることになり、少女は思い切って頬張った。
シャク…。
『…っ！』
「どうした！？毒だったのか！？」
『…すっごいまずい…。なんか変な味…。でも、毒っぽい感じはないよ。』
少女は少しえずきつつも無理やり飲み込み、少年に味を教えてあげた。
『それに、鼻つまんだら食べきれそう。』
「まじか。てか、ユキは一口でも食べたら最後まで食べきるよな。いつでも。」
『当たり前じゃん！作ってくれた人に失礼だし、なんか最後まで食べないとっていう使命感？みたいなのがあるからさー。って、翔もばーちゃんの料理残さないじゃん！』
「だってばーちゃんだぞ！？怒ったら怖いじゃん！まぁ、そうでなくても普通は残さないよなー。」
『ねー。』
2人はニコニコと笑いながら、日が暮れてきたのを感じて、“ばーちゃん”の元へと走り出した。
ピピピピピピ……！！！
『…うーん…。……まだ8時じゃん…。…ん？…え？ちょっと待って！8時はやばい！！！遅刻する！」
バタバタと着替えつつ、階段を降りる。もう同居人達は出ているようで、自身が出す音以外はなんの音もしなかった。
キッチンに置かれた皿に、明らかに食べ残しであることがわかる具やパンの食べかけが乗っているのがみえた。
『またかよ。毎日食べ残ししやがって。あ〜もう。腹が立ってきた。メシ抜きでいいか！』
まぁ、彼女達のことなどシェアハウスでしょうがなく暮らしているとしか思っていないのであるし、キッチンに残されている料理も自身が作ったものではないので、どうでも良かった。
家を出てから走り続けて10分、目の前の歩行者専用の信号がパッと青から赤に変わったのを見て、ため息をつきながら立ち止まった。
『あーもう！ここの信号長ぇのに！」
時間が迫っていることに焦りを感じつつ、何気なく周りを見回していると、目の前の横断歩道を10歳ぐらいの少女がゆっくり歩いてこちら側に来ていた。
『は！？』
少女は歩行者専用の信号は青だと言わんばかりに堂々と横断歩道を渡っていた。確認してみても、依然、歩行者信号は赤色のままだった。
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作者名：インドア女子 | 作成日時：2019年3月29日 22時
