【赤井秀一】【bl】燃ゆる花弁に口づけを (ページ32)

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30話ページ32

激しい腰の痛みに顔を歪め、意識が覚醒する。瞼を開けると、ひなの顔が。

泣いた跡を撫で、痛みを我慢して起き上がる。ベッドから遠いところにあるソファーにかなが寝ていた。

今回はひなが疲れたから譲ってやったのだろう。明日、褒めてあげよっと。

クローゼットから適当な服を選び、掠れた声を治すためのど飴を舐める。

「……コンビニいこ」

◇

小さくなった飴を舌で転がし、スナック菓子しかないカゴをレジに持って行く。

ヤンチャしてそうな店員が退屈そうに合計金額を言う。

「――5番を一つ」

とそこで、煙草を買おうとする客を横目に見た。

明るめの茶髪の、背が高い男だった。メガネをかけており、横からでは表情が窺えない。

真面目そうな男が煙草を買っている姿はどこか面白く、小さく笑んだ。

お金を払い、袋を持って足を進めていくと男の横を通り過ぎる。

「――?」

一瞬見られていたような感覚を覚え、後ろを振り返った。

しかし、誰もこちらを見ておらず、気のせいだと思うことにしてその場を立ち去った。

「あーあ、またかなにどやされんな」

夜中に食べることをかなは良しとしない。
俺がしない体調管理をしてくれているからだろうが。

……それにしても、さっきの視線はなんだったんだ。

気のせい、なんて甘く思いたくないけど。今は幸福に浸っていたい。

そうして、まだ痛む腰を擦りながら帰路を辿っていった。

「――」