21話 ページ23
ジンを近くのホテルに連れ込み、もう一人の男は先に帰らせた。
ジャケットを脱いでハンガーに掛ける。ん、と手を差し出してジンのコートも掛けてやった。
「外も暑かったけど、中相当だね……死にそ。クーラーあるかな」
「見てわかるだろ。あれだ」
「あー、ほんとだ。え、でもリモコンない。ちょ、探して。暑くて死ぬ」
「自分で探せ」
「俺がぶっ倒れたらひながおまえ殺すよ」
と、半ば脅しをかけると本日二度目の舌打ちをする。のろのろと動いて、共にリモコンを探した。
結局見つけたのはジンだ。
リモコンを片手に、整理整頓苦手だろとにやついてたのが腹立った。もう殺そっかな。
部屋に冷気が満ち、暑さが無くなる。それだけでこの世の悔いなし、と言いたいくらい救われた。
「そろそろシよっか」
ああ、と無愛想に頷く。すると、ヘアゴムを口に咥えて長い髪をまとめ始める。
髪を一束に括ると、すぐに押し倒した。背中から肩に流れた毛先が頬をくすぐる。
首筋に顔を埋めて、舐める。その舌触りに吐息を漏らし、言った。
「っさっき髪下ろしてたのに、なんで?」
「スるとき邪魔だろ。それに……」
と言いかけて顔を上げる。ジンの瞳に映る自分の顔を見つめ、言葉を待つ。
「こうしときゃ、おまえの顔がよく見える」
冷たく凍えた目を細め、薄く笑いそう言った。それは、本当に子供みたいな笑い方。
――なんでだろうな。
服を脱がされ、体中にキスを落とされながらぼんやり考える。
凍てつくような瞳も。素っ気ない態度も。たまに見せる笑みも。首が痛むほどの身長差も。
全部あいつと重なる。
重ねて、しまう。
でもそれだけだ。
外身こそ似ているが、中身は全然似ていない。
……外身だけが似ているから、余計にこいつに会いたくないのだ。
「挿入れるぞ」
「えぁ、待って、まっ……んんっ!」
凍てつく瞳の色。変に素っ気ない態度。たまに見せる子供みたいな笑い方。見上げるのが好きな身長差……
――マッチで火を点けて、息がしやすくなったみてぇに煙草を吸う姿。
「…………やだ……ぃ、や……ぁあ」
おまえが嫌いだ。おまえも嫌いだ。あいつも嫌いだ。嫌いなんだ。あいつが―――わかんない。
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