10話 ページ12
「……あー、あ、声枯れてる」
ボイトレ感覚に声を出すと、掠れたような吐息が喉を震わせる。
腰に来ている痛みも合わせ、昨夜の疲労が一気に降りかかってきたようだ。
「すみません。つい、激しくしてしまいましたね」
着替えの用意を済ませたかなが腰を折り、申し訳なさそうに謝る。
すると、隣で俺を抱き枕のようにして抱き締めていたひなが、口を尖らせて言う。
「そうだよ。要さんのせいで、俺ほとんどイけなかったんだから」
「フーン?」
「あ、Aさんが下手っていうんじゃありませんよ。すっごく善かったです……」
今朝の二度寝を思い出し、うっとりと頬を紅潮させる。
愛らしい反応をする彼の頭を撫で、ありがとうなと笑う。それに、嬉しそうに表情を明るくさせた。
激しく抱かれたのはひなも同様だ。なのに疲れていないように見えるのは、鍛え方の問題なのだろう。
これを機に鍛えてみようか。
と、思いかけたがやめる。しんどい。
「Aさん、戯れもそこら辺で。そろそろ会合が始まります」
やはり無表情のまま、淡々とスーツを渡す。後ろから伸びた手がそれを受け取った。
受け取ったのは、ひなだ。
可愛く笑顔を浮かべて、愛らしく小首をかしげる。
「着替え、手伝ってもいいですよね?」
大の男が可愛らしい仕草をすると萌えるのはどうしてなんだろう。俺だけなのか。
「いーよン」
「やった!てことで、要さんは連中のお相手しててください」
「組長たちと関わりたくないなんてぬかさないでくれたら」
「Aさんの着替え見んな」
「ならいいです」
二人ともが俺を愛していると、こういうときつくづく実感して幸福感に浸る。
先行ってますと一礼し、部屋を出ていく。軽く手を振ってかなを見送った。
「さ、着替えましょー」
「変なコトすんなよ?」
「ふふ、変なコトって、たとえばこんなのですか?」
「ぁっそこは……あー、もう……ちょっと遅れてくか」
「そうしましょ♪」
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