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「Aっ…」
「廉！！」
Aは俺に向かって走って来て勢いよく抱きついて来た。
「廉、なんで泣いて…！」
心配そうに俺の顔を見た。
それに余計に涙が込み上げてくる。
「…あのな、俺引っ越すことになった。」
嘘をついた。
「もうAとは会えん。」
「い、つ引っ越すの？」
「Aと話終わったら」
そう言うと、Aの目からぽろぽろと涙が落ちた。
悲しませたく無かった。
「嫌だよ…」
俺だって嫌だ。離れたく無いのに。
今ここで別れを告げないと。
「俺な、楽しかった。Aと遊んだり、話聞くの。本当は関わるはずなかったのに、こんなに楽しいって思ったのはAといる時だけや」
これでもう最後。もう、会えない。
「俺、Aの事好きや。会えなくなっても、俺のこと忘れてもずっと。」
最後だけは笑っていたかった。目に涙を溜めながら笑って言った。
「廉っ……私っ……！」
Aが何か言おうとした瞬間だった。突然布でAの口が塞がれた。
メイドが彼女を支えた。
「A…！」
Aの目が少しずつ閉じていく。
「ご苦労様。」
Aが目を瞑ったのを確認して、Aの父親が注射器を持って来た。
そして彼女の首に針が刺さる。
彼女が目が覚めた時、もう俺という存在はいないことになる。
喪失感しかなかった。
「よし、完了だ。Aを部屋に連れて行け」
「かしこまりました」と言い、メイドとAはこの部屋から出て行った。
「君も帰っていい。今後この家には近づかないでもらいたい。」
ドアが開かれた。「早くここからいなくなれ」と言っているようなものだった。
最後に俺はこの人を睨んだ。
「あの子に関わりたいって思うなら執事にでもなればいい。まあ、無理だろうけど」
そう言われて、扉が閉まった。
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作者名：薄 | 作成日時：2022年11月19日 0時
