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福沢諭吉と江戸川乱歩と ページ30

福沢諭吉は、江戸川乱歩を社長室に呼びつけた。
「なあに社長。僕も暇じゃないんだけど、仕方ないから来てあげたよ!」
江戸川乱歩は両手一杯にお菓子を抱えて社長室に入ってくる。そして机の上にそのお菓子をばら撒き、椅子にどっかり座って福沢諭吉に話を促した。
福沢はいつものことなのでそれらに特に反応せず、話を切り出す。
「以前、私とお前が出会った時にいた暗殺者のことを覚えているか」
「覚えてなーい」
乱歩は即答した。有象無象に対して、大して興味が無かったからだ。
福沢は予想の範疇だったので特に何も言わず、気にせず話を進める。
「探偵社に、新しく人が入る。入社試験をお前に頼みたい」
「えー面倒だなあ、国木田あたりにやらせようよ!」
福沢は彼が突出して優秀な暗殺者だった事を知っている。大人になった今でも尚過去の戦闘センスが健在なら−−或いはそれ以上に洗練されているならば、実力に関しては問題ない。
問題は思想だ。
口ではなんとでも言える。だが、心の底で何を思っているかは分からない。
少年の頃の彼は、他人を見下す素振りも、殺人に歓びを見出す事もない、極めて優れた暗殺者だった。だが、今はどうか分からない。
ただ、良い方向か悪い方向かは定かではないが、以前見たような感情のない瞳では無くなった。人間味がでてきた、と言うべきか。
良い方向に変わっているのなら、良い。
もし殺人に歓びを見出してしまうような、悪い変化が訪れていたのなら……。
真実に彼が信頼に足る人物かどうか、それを乱歩に暴いて欲しいのだ。
「次の任務に織田作之助を同行させ、適正を判断しろ」
「んー、ま、ボクの助手が一人増えたと思えばいっか!」
乱歩に危険が及んでしまう可能性もあるが、乱歩であれば事前に推理し、回避することも可能だろう。
乱歩が遠慮なくボリボリとお菓子を貪る中、福沢は過去の、独房での会話を思い出していた。

“仲間も上司も欲しいと思ったことはない。だが、貴方ほどの武術の達人が、主義を曲げてでも助け出そうとするなんて−−その部下は幸せ者だ。少しだけ、羨ましい”

そう言っていた少年が今は組織に所属しようとしている。それも、私の下で。
未来なんて分からないものだ、と福沢は呟いた。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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