【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

イルカは半分だけ眠る5 ページ25

「織田作」
「……」
「織田作？」
「……」
織田作は完全に酔い潰れたらしい。まあ、あんだけのアルコールを煽れば潰れるよね。
それに加えて、睡眠薬もバレないようにいれてたし。むしろ、寝落ちてくれないと困る。
織田作の頬は朱がさしている。
織田作が私の好意を無碍にできない事は知っていた。そこに漬け込んで、私は織田作を潰したのだ。

優しい織田作。ポートマフィアの中で唯一人を殺さない変わり者。
そして、唯一の私の理解者。

前回は死に際になって初めて知った。
織田作が私を思っているより深く理解している事を。そして、織田作が私の懐に踏み込んで来ないのを分かっていて、安心していた。だから私も踏み込まなかった。
けど、踏み込むべきだったのだ。傷付いてもいい、今の関係が崩れてもいい、織田作を死なせるぐらいならその方が数倍マシだ。
織田作の事を、私は何も知らなかった。
どうして人を殺さないのか、ポートマフィアに入る前は何をやっていたのか。
全部全部、終わってから知った事だ。
今回はそんな事させない。織田作が死ぬ未来を見るのなんて二度とごめんだ。

私が、私だけが未来を変えられる。織田作を助けられる。

「オーナー、タクシー呼んであるから織田作を運び入れるの手伝ってくれない？」
「かしこまりました」

織田作を死なせない為には、子供達を守らなければならない。子供達を殺させない為には、そもそもあの亡霊共に織田作を会わせなければいい。


織田作が事件に関わらなければいい。


敵のボスは織田作じゃないと倒せない。
けど、例え織田作と同じような異能を持っていたとして、その異能は万能じゃないし、無敵じゃない。
弾が当たれば傷付くし、頸(くび)を刎ねれば死ぬ。
なんとかしてみせる。織田作は死なせない。

それが、もう一度このつまらない人生を歩む事になった理由だと思うから。

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