ぶっ壊せ!10 ページ18
きっと太宰はあの発言について言っているのだろう。
だが、この様子を見たところ、太宰は私に転生者だと伝えるつもりはなさそうだ。
私はこれ幸いと嘘を吐く。
「いや? 何も言っていなかった」
「そう、ならいいんだ」
ホッとしたように息を吐く太宰。
なんて言うか、小説を読んで感じたより、太宰の感情の起伏が大きい。
というより、よく顔に出ている。
きっと、織田作に全幅の信頼を寄せているんだ。
うわー、罪悪感かな。
「ふふっ、それよりも織田作。幼気な少年を自室に連れ込むなんて……君もなかなかやるねえ」
ニヤニヤしながらそんな事を言われた。
からかわれているのだろう。からかい方も酔っている所為か随分雑だ。織田作と太宰は同性だろうが。
そもそもどの口が
「太宰の家を知らなかったからな」
言いたい事は色々あるが全部飲み込む事にする。酔っ払いの戯言だしな。それに私の方が年上だ。
「なら今度ウチに遊びに来てよ。織田作なら歓迎するよ」
「ああ、また今度な」
また今度。ああ、未来の約束ほど重いモノは無い。
・
「さ、今日はサクッと仕事終わらせちゃおっか」
「……なんだいきなり。明日は槍でも降るか?」
「失礼だなあ、中也は。まあ、今日はいいさ。気分がいいからねえ」
鼻歌でも歌い出しそうな太宰。
何だァ、気持ち悪いな。
しかもサボリ魔なあいつが『サクッと』仕事を終わらせる? いつも駄々こねて、川に入って、予定を大幅に遅らせるあいつが?
し、信用できねェ……!!
と思っていたが、実際、今日はすごく真面目に取り組んでいた。気持ち悪いぐらいに。
もう一度言う、気持ち悪いぐらいに。
気持ち悪いぐらいに!
今日予定していた仕事は殆どが午前中に終わった。
なるほど、此奴さえ真面目にやりゃ、こんだけスムーズに仕事が終わるんだな、理解した。
「どういう風の吹き回しだ?」
「んー?べっつにー。というか、中也には関係無い」
「そーかよ」
まあ、此奴が仕事を真面目にやるってんならそれに越した事はねェ。
「あーあ、中也と仕事するより織田作と仕事したいなあ。そしたら私、もっと頑張るのに」
「あっそ。なら部下にでもすればいいんじゃねーの、そいつ」
「だーめ。織田作は私の友人だから部下じゃ無いし。どうせ誘っても乗ってこないよ」
「お前の……友人!?」
嘘だろ!? そんな酔狂な奴、この世に1人だって居ない筈。
「……イマジナリーフレンド?」
「私にも織田作にも失礼」
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時