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ぶっ壊せ!9 ページ17

太宰はもう、一人で歩けないぐらいには酔っていた。
仕方ないので酒場代を奢り、私は太宰を背負って帰った。
太宰治の家、知らないし。
絶対太宰の家より貧相な家だが、まあ我慢してくれよ。

相も変わらず紙体重な太宰を私のベッドに寝かせる。酔っ払い(しかも少年)の看病なんてした事ないのでわからないが、一応風呂場の桶を綺麗にして、ベッドの脇に置いてやった。
吐くだろ、多分。寝ゲロなんてされたら堪ったもんじゃないので、起きて自分で吐いてくれる事を願う。
風邪でも熱でもないが、妙に顔が赤く暑そう(酒のせい)だったので、水で絞ったタオルを額に乗せてやった。
冷えピタとかがあれば良かったんだが、そんな便利なもの、購入していなかった。

…酒臭いな。風呂に入るか。





「う"っ」
急な吐き気に襲われて目をさます。
流石にぶちまけてはならないとは思っていたので、咄嗟にそこにあった桶をひっつかんでその中に吐いてしまった。
吐き気で起きるものなの…というか、此処何処?
ホテル、には見えないぐらいの生活感はあるが、大して物が置かれていない。
まるで身辺整理された部屋みたいな…
ガチャン、と扉が開く音がした。
「目が覚めたか」
ここは織田作の部屋か。
気づいた瞬間に不安に襲われる。
この部屋は、これじゃまるで消える準備をしているようだ。
「うん……御免ね、迷惑かけたみたいで」
「気にするな。ちゃんと吐けたのか、良かった」
織田作は顔をしかめる事もなく、淡々と処理をしてくれる。うわー、いたたまれない。申し訳ない。
「あー、御免ね、ほんとに」
「良いさ。それより何かあったのか? 私でよければ話を聞くが」
部下が撃たれて倒れていく姿が、君とダブって見えた、なんて言えない。
「…いいや、何でもないさ」
「そうか。お前は一人で溜め込みがちな所があるからな。頼りないかもしれないが、周りの大人を頼れ」
ぽん、と私の頭に手を置かれる。
「もう、子供じゃないんだから」
織田作は、いつまで経っても変わらない。
この穢れた世界の中で、唯一織田作は私を見てくれた。仕事仲間や相棒と呼べるものには出会ったけれど、友と断言できるのは織田作と……まあ、安吾も。
「私からみたら十分子供だ」
「最年少幹部を捕まえて、そうやって子供扱いしてくるのは織田作ぐらいだよ」
「嫌か?」
「…いやじゃないかも」
「そうか」
まだ酒が回っている。うっかり本音が飛び出して…

「ねえ、もしかして私、変な事言ったりしてた?」

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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