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ぶっ壊せ!8 ページ16

「そういえばなんで初対面なのに、私の名を知っていたんだ?」
「いやあ、たまたま書類で見かけて。それで覚えてたんだよ」
「そうなのか。幹部の記憶力とは凄いものだな」
尊敬する、と素直に伝える。
「……ありがと。ああ、もう久し振りだよ、この感覚……暫く聞いてなかったから威力が……」
……矢っ張り、太宰と私は一度何処かで会っているのだろう。
そうでなければ、今のようなセリフが出てくるはずがない。
だが、何処で会ったかなんて思い出せないし、会っていたら絶対私が気づくだろう。太宰治に会うなんて忘れるはずがないのに。
だが、それを訊くのは藪蛇な気がして、何も言わない事に決めた。

相手は太宰治だ。やろうと思えば、私一人消す事など造作もないだろう。
まして、今はまだ二回目の邂逅である。
そんなに踏み込んだ話をするべきではない、と思う。







それから私達は、あの酒場で何度か会った。多分、此処は無頼派が立場を気にせず、友としていられる唯一の場所だろうと思う。
太宰も私も、踏み込んだ話は一度もしなかった。
只々取り留めのない話を延々と続ける。

そんなある日
「ねえ、織田作。もう何処にも行かないでよ、私の事まで『どうでもいい事だ』と捨てないで。あんな奴と心中するぐらいなら私としてくれれば良かったのに。今度は君を止めてみせるから……」
『後に残っているのはどうでもいい事だけだ』
今日はやけにハイペースで飲んでいるな、と思ったんだ。予想通り、デロデロだ。
全く、酒の力を借りないと本音も言えないなんて、面倒な子供だ。
「……ああ、死ぬつもりはないさ。安心してくれ」
そう、『私』は死ぬつもりなんて、織田作を死なすつもりなんて毛頭ない。
それは織田作が原作で言った言葉だ。
だから私は太宰治は転生者なのだ、と確信した。
その途端、今までの疑念が一気になくなった。
解決したのだ。

太宰治は織田作之助を渇望していた。
だからこのチャンスを絶対に逃がさないだろう。
こんなに心強い味方がいるとは思ってもみなかった。
……尤も、太宰治は織田作の味方でこそあれ、私の味方ではないが。
寧ろ、私が織田作の中に入っていると知られたら「織田作を返せ」と拷問にでも掛けられるだろう。そのぐらいはやってのけるのがこの少年だ。

やべえ、絶対私が入ってるってバレちゃダメだ。殺されかねん。

騙すのは心苦しいが(というか太宰は騙されてくれるだろうか)、致し方ない。

一緒に織田作、救おうぜ?

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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