29.肉まん ページ29
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歩いているうちに大きい公園についた。
松村さんがいつも行く散歩コースらしい。
そこをなんで私と一緒に行くのかよく分からなかったけどまぁ深い意味なんてないんだろうなと思って何も聞かなかった。
暫く歩いて公園のベンチで休憩する事になった。
松村さんは近くのコンビニで何か買いに行ったから今は一人で公園の景色に黄昏中。
まだ早朝だからか人は全然歩いてない。
なんかこの感じ落ち着くなーと思いながらぼんやり目の前にある大きな噴水を眺めてた。
冷たい風が吹くと私の髪の毛がふわっと浮いて
肌寒くなる。
「ん。」
ポンっと膝の上に置かれたホカホカの肉まん。
手で包むように持つとカイロ代わりになってジンジンと冷えていた手があったかくなる。
寒い季節に最高だよね、肉まん。
「わ、肉まんですか」
「あれ嫌いだった？」
「いえ、むしろ大好物です」
有難く頂きます、と手を合わせてお礼をいうと彼はふっと笑って私の隣に腰掛けた。
「…ダメだな」
「え？」
「ここの公園に執着してんのよ、俺」
彼にどうしてですか？と訊こうとしたけど訊けなかった。
だって隣であまりにも切ない顔してたから。
「あーでも私にもありますよ」
「…ん？」
「執着されていた場所？みたいなの」
私にとっての執着されている場所なんてひとつしか思い浮かばなかった。
地元の中学校近くの有名な桜通り。
そこは私にとって初恋の場所でもあり、
残酷な恋の終わりの場所でもあった。
地元の人からは桜ロードなんて呼ばれていてそこで一緒に歩いたカップルは長続きするとかいう今考えたらしょうも無いジンクスがあったりして。
そんなのは所詮ジンクスに過ぎない。
だから私は信じない。
とか思い始めたのは最近になってからなんだけど。
「執着されていたって事は過去形か」
「そうです...かね？でも私にとって忘れたい過去ですから」
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「あ！そうだ…肉まんのお金返さなきゃ」
「いらねーよ」
「いえ、こういうのはキッチリしたいので」
そう言ってズボンのポケットから小銭を出して彼の手に無理やり置いた。
だってこうでもしないと松村さんは受け取ってくれな感じだし。
お金で仮は作りたくない。
理由はただ単にめんどくさいから。
「ポケットから小銭ってお前はオヤジかよ」
私が無理やりのせた小銭を見て松村さんはバカにしたように口を大きく開けて笑った。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
