23.誘惑の豆大福 ページ23
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さっきのは何だったんだろう？
何か言いかけてたよね。
松村さんから掴まれた手首の感触がまだ残っていてどうしてなのか分からないけど胸がキュっと締め付けられた。
お酒、結構入ってたんだろうな。
だってそうじゃなきゃ私にあんな感じで絡んできたりなんかしないだろうし。
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「A。」
自分の部屋に入ろうとした時、後ろから小声で自分の名前を呼ばれた。
振り向くと田中さん。
あれ...？
さっきまで家に居なかったはずなのにいつの間に帰ってきてたんだ。
そう不思議に思っていると、
「ちょっときてー」
と手招きされる。
「何ですか？」
「豆大福もらったからさ、一緒に食べようよ」
そう言って片手に持っている紙袋を顔の横近くまで持ち上げた。
豆大福.....。
食べたい、おいしそう。
豆大福大好きだからその言葉を聞いただけでテンションが上がる。
豆大福に限らず、
食べ物にはめっぽう弱い私。
気づいた時には「いいんですか？」って田中さんに聞いてしまっていた。
やっぱり人って食べ物の欲求は勝てないもんね。
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「うん、俺の部屋で食べよ」
「はい！って...え！？田中さんの部屋で、ですか？」
「そう、駄目？」
「いえ駄目...って言うわけじゃないですけど」
男の人の部屋。
そんな簡単に入って平気なものなんだろうか？
心の中ではちょっと戸惑ったけど
まだ来て数日。
色気のいの字もない私に襲ってくるような事はなさそう。
そもそも田中さんは私みたいな地味な感じは絶対タイプではないだろうし。
だって私を見る目線がもう絶対異性としてでは無いんだろうなって分かるし。
「ほら早く来なよ」
「あっはい、お邪魔します」
結局、豆大福に誘惑された私は
吸い込まれるように田中さんの部屋に入った。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
