20.胸のトキメキ ページ20
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京本さんと二人きりの状況に慣れていなくて気まずくなるはずなんだけど何故か今の空気感は心地がいい。
でも顔の距離が近すぎるから目線はずっと前に向けて歩いた。
まず彼と目を合わせられない。
学生の恋愛かって。
「それよりなんで傘持ってきてないの？」
「....天気予報、見るの忘れてました」
暫く何も話さず黙って歩いていた私達。
その沈黙を破ったのは京本さん。
相変わらず彼の方に視線を向けることはなく前を向いたまま京本さんからの質問を返す。
でも京本さんからの視線も全然感じなかったし、
彼も違う方向を向いてるんだろうなと見なくても分かった。
「にしてもこれは馬鹿過ぎじゃない？」
「あははは......、たしかに馬鹿ですね」
耳を触りながら愛想笑いをしてみた。
実際、馬鹿だとしか言いようにない。
傘も財布も家に忘れてるし。
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ーゴロゴロ。
雷がさっきよりも近くで大きな音を鳴らし始めるから思わず体が震える。
やだな……。
どうしよう、早く家に帰りたい。
そう思っていると、
電柱のライトが次々と消えて辺りが暗くなった。
「ん？停電かな」
隣にいた京本さんがポツリと呟いた。
停電.....、
どうしよう、この状況じゃ何処にも隠れられない。
そしてまたすぐに雷がゴロゴロと音を立てると
地面を光らせる。
怖くて反射的に目を背けていると、
「...もしかしてAって雷、苦手？」
京本さんがそう話しかけてきたけど怖くて声が出せなかった。
だから無言でコクコクっと頷く。
隣でガサガサと何か音がするなぁと思えば、
ふわっと頭の上にタオルがのせられた。
そのタオルからは柔軟剤のいい香りがする。
「もうすぐ家だから、これで我慢して」
"大丈夫だから"
そう真横から聞こえたその声はとても優しかった。
低すぎず高すぎず心地のいい声。
安心させてくれるような優しい声。
もしかしてタオルで雷のヒカリを少しでも遮らせてくれたのかな？
そう思ったら胸がじんわり熱くなっていく。
その後もタオルで隠れていたから京本さんの表情分からなかった。
だけど家に着くまでの道のりを私からずっと離れること無くポンポンっと背中を摩ってくれていたから
怖さが段々と落ち着いてきていて
忘れかけていた胸のトキメキを取り戻せたような気さえしていた。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
