17.新しい就職先 ページ17
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"企画会議室"と書かれたドアの前まで来ると
櫻井さんがその部屋の扉をおさえて
先にどうぞ、と手でジェスチャーしてくれる。
「ありがとうございます」
部屋の中に入ると沢山の椅子と机が並んであった。
前に働いていた会社がダメだとかじゃないけどそれとは比べものにならないくらいの広さにやっぱり圧倒される。
「好きな席に座っていいですよ」
「あっはい、失礼します」
キョロキョロしていた私を見ていたのかすぐに察知してそう言ってくれる櫻井さん。
近くの椅子に腰掛けると、
櫻井さんは私の目の前に座った。
なんだか面接みたいで緊張する。
何年ぶりかな、こういう感じ。
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「いきなりで失礼なんですが、就職先探しているって事は前の職場は？」
それやっぱり聞かれると思った。
「色々あって辞めてしまって.....元々、地元はここじゃないんです。」
ああ、自分の語彙力の低さに嫌になる。
伝えたい事が上手く伝えられない。
それに櫻井さんの目をしっかり見ないと、と思っているのにあまりの緊張で目が泳いでしまう。
慎ちゃんがせっかく紹介してくれてるっていうのにな。
「あーなるほど」
櫻井さんはそれ以上深堀りはして来なかった。
気を使ってくれたのか呆れられたのか、
どっちか分からないけど今の私の状態見て察したのかもしれない。
すると急に何か思いついたように
体を前のめりにして私を見る櫻井さん。
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「もし佐藤さんが良ければなんですけど、
僕の秘書をしていただけませんか？」
「え....秘書ですか？」
「秘書って言っても僕の雑用みたいな感じになってしまうかも知れないんですがそれでも良かったら....」
「はい！勿論です、何でもします！！」
「あはは、頼もしいね」
今の私には断る理由なんてない。
そもそも雇ってくれる人すらいないだろうから。
じゃあこれから宜しくね、
そう言うと、もう次の仕事があるのか腕時計をちらっと見る櫻井さん。
「ごめん。会議あるから行かないと」
と申し訳なさそうな表情。
「すみません、お忙しいのに時間まで作って頂いてしまって....」
深々とお辞儀をする。
「いえいえ、詳しい日程とかは森本くんに伝えるからまたその時に。佐藤さん、気を付けて帰って下さいね」
そう言いながら櫻井さんは軽く頭を下げた。
これぞ出来る大人。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
