とある軍の幹部事情！Story3 (ページ41)

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第130話　byラファエルページ41

「…ラフ」
「RAVEN」

ハッキング対応の為管理局へ駆けたシーナが淹れてくれたセージの香りが抜ける頃。控えめな3つのノックと共に顔を覗かせたのは、彼女の“パートナー”であるRAVEN。

「失礼します」

髪のセットを終えた彼はその深緑色の美しい髪を揺らしながら、ラファエルの返事を待つこと無くラファエルの元へ赴く。

爪の先は彼女の纏うドレスと同じロイヤルブルーで艷やかに彩られ、ドレスを試着したあの時よりも何倍も美しくなった彼女の象牙色の髪が窓から吹く風に僅かに揺れる。陽の光に反射する程に明るいその髪は、RAVENの右手に掬われたまま、彼の鼻先に近付けられた。

「…RAVEN？」
「綺麗です。…誰よりも、貴女が」
「…え」

生まれてこの方言われた事も無い言葉が、見たとしても物語の中だけだったそんな言葉が、今。目の前の彼から、紛れもなく目の前の彼から、他の誰でもないラファエル自身に向けられている。
やがて髪は柔く落とされ、RAVENの手はラファエルの訓練の甲斐無く中々筋肉がついてくれない華奢な白い肩に添えられる。

「先日父に渡された本に書いてありました。カップルはこういう事をして、より強い信頼関係を築くと」
「より強い信頼関係…」

確かに。彼女らはあと数刻で大芝居を打つのであり、それには計り知れない信頼が必要。
なるほど、彼も彼なりに考えてくれたのだ。出来ることは何でもしなさい。敬愛する我が師に再三伝えられた言葉の1つである。

「動かないで、下さい」
「…分かった」

かつて、最高の相棒が敵になった時。彼女自身から銃口を額に充てられた事をふと思い出す。銃口は硬かった。そして冷たかった。何発も撃った直後なら、多少の熱は残っているはずなのに。

だが彼から贈られたそれは柔らかくて、温かい。
額から離され、閉じた瞼に触れられ、離され、鼻先に触れられ、離され、唇。

「ラフ〜、調子どー……よ………！？！？！？！？！？」

に触れられる事は無かった。

「え、ら、ふ、れい、ぶ、え、ええ…えええええええええ！！！！」
「どうしたんだよナガンレア…」

先程思い出した相棒が窓からひょっこり。少し後から隊長がひょっこり。
ナガンレアは覚束無い足取りでクロに耳打ち。直後、クロの瞳が大きく開かれる。

「はあああああああああああ！？！？」