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24話 ページ25

*


月日は流れた。


四年と云う、人間にしては長く、刀には短い時間。


不知火は現在も審神者をしていた。


刀剣男士達と、笑い合っている。


其の彼女の傍には初期刀の加州清光。


彼は何時も彼女の傍に居た。


四年前のあの日のように…彼は不知火の傍に。



『…また、春が来た』



事務仕事をこなす不知火は、ふと、外を見た。


変わらない桜が、風に揺れる。


遠くから見ると、薄い朱色のよう。


近くから見ると、白色に近い。



加州「そーね。

もう、四年前だね」



『…あの日は忘れない。

然して…目が覚めた時に見た、綺麗な赤も』



外に目線をやっていた不知火は、加州の瞳を見つめた。



加州「?」



然し、加州は分かっていないようだ。


不知火の云う ” 赤 ” 。


美しい加州の赤い瞳。



あの日__



不知火が目を覚ましたのは、一週間も後の事だった。


不知火の傍を離れなかった加州。


故に不知火の視界に入った色は、加州の赤い瞳だった。


其の次に写るのは、凛と花開く桜。


不知火は、其の二つの色に安心した。


失った大切な刀の瞳の色。


枯れてしまった、共に成長した桜。



加州「主は桜が好きだね」



加州はふと、不知火に云う。


不知火は加州から、桜を見た。


然して懐かしむ様に、目を細めた。



『…あの桜だからだよ。

あの桜は…私が初めて審神者になった時に植えた桜だから』



本丸に或る桜並木。


其の中で一等美しい桜は、審神者部屋の目の前に或る。


然し、其れは不知火の意図があった。


此の桜と共に私は此処で成長する、と云う想い。



『今年も…桜は咲いた。

一度枯れた桜が、また咲いてくれたんだ。

もう、枯らさない。

然して…貴方達が折られる様なことも』



不知火の瞳は四年前と少しだけ変わっていた。


片目は変わらない。


が、もう片目は…光を失っていた。


不知火は審神者を殺した。


其の件の謝罪と反省として、自分で片目から光を奪った。


加州が彼女の傍を離れないのは、其の為。


半分しか不知火の視界には映らない。


けれど、不知火は其れでも良かった。


片目を失っても彼らと共に歩みたかった。



『(両方の瞳で彼らや桜を見れないのは、嫌だけど…。

之は一種の私の罪の証。

背負うべきもの。

何より…彼らが居る。

其れだけで私は十分)』



加州と不知火は少しの間、手を止め桜を見ていた。

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- 大丈夫です。ありがとうございます! (2019年6月8日 7時) (レス) id: 38888895ed (このIDを非表示/違反報告)
Iuna(プロフ) - 躪さん» ありがとうございます!リクエストの方は、明日ぐらいに公開しようと思っています。リクエストの時より、だいぶ変わってしまいました。申し訳ございません。 (2019年6月8日 0時) (レス) id: 1960f5595d (このIDを非表示/違反報告)
- 完結おめでとうございます!リクエストの件はどうなりましたか? (2019年6月7日 22時) (レス) id: 38888895ed (このIDを非表示/違反報告)
Iuna(プロフ) - Asterisk《あすたりすく》さん» ありがと〜!!(≧▽≦) (2019年6月7日 18時) (レス) id: 1960f5595d (このIDを非表示/違反報告)
Asterisk《あすたりすく》(プロフ) - 完結おめでとう〜! (2019年6月7日 18時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Iuna | 作成日時:2019年5月17日 21時

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