雪男 in がーる３ (ページ35)

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◎大学受験ページ35

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◎Abe

これは数年前の、Aが大学受験する時のお話。

『 ……阿部ちゃん、』

いきなり、そう声をかけられた。一瞬反応には遅れたものの、瞬時にその声はAの声と理解。「どうしたの？」と聞いてみるのだが、Aはどこか浮かない表情をしていた。

『この後、話あるんだけど……いい？』

阿部「 ……いいよ。俺の家来る？」

『うん、』

なんとなく、話をしたいことは分かっていたのかもしれない。Aは今年、高校三年生になったばっかりで。その後の進路とかかなあ、なんて軽く考えてた。

仕事が終わると、すぐにAと俺の家に向かった。何度かAは家には来たことがあるので何の躊躇いもなく家の中に入る。「お邪魔します」と言う辺りやっぱり育ちのいい子なのかな、とも思う。

リビングに入って、広がっているテーブルの椅子に座る。俺は冷蔵庫からミルクティーを取り出してコップに注ぐ。

Aの好きな飲み物がミルクティーだから。
ずっと昔からそれは変わってなくて、なぜかAが家に来たときに、ってミルクティーを常備するようにしている。

阿部「はい」

『 ……ありがと、』

ミルクティーを注いだコップを前に差し出して、自分も向かいの椅子に座った。俺もちなみにミルクティーだ。何となく同じ飲み物にしたい気分だったという、気まぐれである。

阿部「 ……で、話って何？」

『あ、の。一応、ずっと前から考えてて。どうしようかなって思ったけど、決心がついたから。

この考えは変えるつもりは無いけど、阿部ちゃんには先に言っておこうと思って』

時々、詰まらせながら一つ一つ言葉を並べていく。そして、少し間が開いてたからAにこう言われた。

『私、大学受験することにした』

……大学、受験。一瞬にして、その言葉は頭に入ってきて思考をグルグルと回す。確かに高校三年生なんだから、大学か就職かの選択をしておかないといけない時期だ。

でも、別に大学に入ることはおかしくない。
現に俺だって大学行ってるし、佐久間だって。

阿部「 ……そっか、」

『大学も、もう決めてて』

この後、なんで最初に俺に話をして来たのかっていうのがよく分かることになる。

『上智大学、受ける』

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