階級・甲の癸さん拾壱

464話 ページ6

嘴平「何で捕まえる必要があるんだよ。」



…猪くんのその言葉に、僕に掛かってこようとしていた柱様方が動きを止める。



胡蝶「…隊律違反だから、」



嘴平「隊律違反だから何だよ、何もなくてそいつが人を殺そうとするのか？」



『…猪くん、』



嘴平「何かあったとか知らねぇけど、昔のことだけでそいつが人を殺そうとするわけねぇだろ。

まだ出会って短い俺がそれを分かるのに、何年も一緒に居るお前らにはそれが分かんねぇのかよ。

お前らが一緒に居た何年もは、何の意味があったんだよ。」



…どうして、君が、そんなことを、



竈門「…悲しそうな匂いがする。」



冨岡「…何を、」



竈門「まるで…わざと捕まろうとしているような…そんな匂いが。」



『…っ、』



我妻「…癸さんは、今…一体何を隠そうとしているの？」



僕を見据えながらそう聞いてくる。



我妻「…今、癸さんから聞こえる音は…何かを必死に隠そうとする音だ。」



ああ…ダメだ、この子達には…隠し事なんて、出来ない。



伊黒「…だから言っただろう、馬鹿者。」



『…蛇さん、』



伊黒「爆発する前に、俺に話せと。」



…ああ、まるで、



『っ…おに、い…』



…何でかな、まるで僕が僕を唯一出せた二人の…その内の、一人のように…そんなことを、言うんだ…



『…僕は…僕は、ただ…』



…言ってもどうしようもないのに、分かっているのに、



『ただ、僕は…愛しいあなたを守りたかった、救いたかった。』



…本当はただ、それだけだった。

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