桜乱 ４ ページ4
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手繰り寄せてもらえない
私の右手。
それを重ねられれば
られる程、
彼に鷲掴みにされる私の心・・・。
駅手前で
彼は足を止め、
黒い大きなワンボックスカーに目をやる。
「えっ・・・
まだ・・仕事・・・」
「ん・・まぁ、うん・・・。」
「あっ・・ありが・・とう・・・」
「えっ？」
「忙しいのに・・・」
彼はほんの少し声を洩らし
笑い出した。
「どうしてそうなんだよ、
誘ったのオレ、」
笑いの間と間に彼が言う。
「あ、うん・・だけど・・・」
「じゃあね、」
「・・・・・・・・。」
「A・・・」
彼のいい声が私の名前を囁く。
それは初めてで・・・
「オレのも呼んで？」
そう言って彼は
私の頬をつついて目じりを下げた。
おっ、その声と共に
彼が空を見上げた。
「すげぇ、ここまで
飛んできた。」
さっきまで
風に舞ってるって
思ってたのに・・・
今は風に翻弄されてるように
見えてしまう。
右手に冷たい彼の手が触れたかと思うと
それはしっかりとつながれ、
すぐに彼の方に視線を、
乱れ飛ぶ桜から移したのに
途端にその手は離されてしまった。
風に乱される
桜の花びら・・・
私の心・・・
「智・・・」
ふふふって笑うと
彼は私に背を向けた。
智・・・
彼の背中に向かって
もう一度、漏れそうになる声を
必死に押さえた。
泣くな、泣くな、
下唇を噛み、
拳を握った。
ふわっと
一切の無駄がない動きをして
彼は私の方に身を翻した。
涙が溢れ、零れ落ちる。
泣くなんて
ズルい、
そう思うのに
止まらなくて
彼はあっ、なんて言う間もなく
私を自分の腕の中に収めた。
好きだ、とか・・・
カノジョ・・とか・・・
それがないと
不安だとか・・・
全部、全部、飛んで行っちゃう・・・。
桜の・・花びら・・みたい・・・。
頭を真っ白にして
彼の温もりに体を預けた。
「ありがとは、こっちだ、」
そう呟くと
彼は再び背を向けた。
背中を丸め
ジーパンのポッケに両手を入れ
小走りをした。
車に乗り込む時、
私をふり返る。
彼はそっと手を振り
マスクを外した。
それはとてもやさしい
笑顔で・・・
四角い画面の中の彼より
何百倍も
ステキで見惚れてしまった。
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さくら(プロフ) - きくさん» きくさん、コメントを頂きありがとうございました。続きが書けるよう頑張ります♪ (2020年3月2日 1時) (
レス) id: 4b974240a6 (このIDを非表示/違反報告)
きく - さくらさんの作品、どれも素敵で見入ってしまいます！次の作品も期待してます！ (2020年2月25日 16時) (レス) id: a7c47c10e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら
| 作成日時：2019年4月18日 13時
