この恋の終わらせ方。〔完結〕

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「筋トレなら私のも持って！」

「えー、紬は瑞稀くんに持ってもらいなよ(笑)」

「…て言われてるよ！はい、どーぞ瑞稀くん♪」

「絶対やだ」



1人前を歩く井上くんはちらりとも後ろを振り向かないで、岩山さんの頼みを却下する。

もうすでに岩山さんの荷物の半分は井上くんの手にあるんだから当たり前だろう。






「瑞稀のいじわるっ！」

ぷくっと頬を膨らませた姿は女の私でも可愛いなって思うほどの威力があるけど、彼女を見ないで前を向いて歩く井上くんには効果はないようだ。






「あーあ、作ちゃんは優しいのになあ。作ちゃんは持ってあげてるのになぁ」

作戦を切り替えたのか、今度は井上くんに聞こえる声でそう言い始める。
しばらくたっても状況は変わらないからこれも失敗に終わったと思っていたのに、




「……あー、もうっ！貸せ！」



根気負けしたのか。
結局持ってあげちゃうんだから、井上くんは優しい人なんだと思う。

……口はとびっきり悪いけど。







「さすが瑞稀！」

「あとでなんか飲み物奢れよ」

「え？なに？聞こえなーい(笑)」








さっき見せてもらった写真のように愛嬌溢れる顔で笑った彼女は、



「行こ！A！」



私の手を引いて走り出す。





「えっ！？」

「瑞稀！作ちゃん！早くしないとおいてくーっ！」


戸惑う私をよそに岩山さんは子どものようにはしゃいでいて、私は彼女に手を引かれたまま転ばないように必死に足を動かした。






「おい！バカ！待てっ！」

「俺も走ろー(笑)」

「作間まで……っ！待てよっ！」









あの時走った意味は今でもわからないけど、


それでもなんだか楽しくて、



「やばいよA！追いつかれる！」



笑う彼女につられるように気がつけば私も笑っていた。


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