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いよいよ紬と瑞稀くんの結婚式。
澄んだ空気に、雲ひとつなくて抜けるように青い空。
紬たちの式はチャペルから海が見えるようないわゆるリゾートウエディングで天気が一番心配だったけど、そんな心配を他所に秋晴れで最高のコンディションだ。
私が式を挙げるわけでもないけど、よかったって思う。
「ほんと一面“海”って感じ…」
予定より1時間も早く着いてしまったせいですることもない。
式が始まる前に紬の様子を見に行こうかと思ったけどさすがにまだ早すぎて、ぶらぶらと散策することにした。
式場のほど近くには澄んだ青い海。
波打ち際まで近づこうかと思ったけどピンヒールで砂浜を歩くなんてさすがに無謀で、しかたなく海沿いの遊歩道を歩いた。
秋晴れと言っても気温は高くなくて、冬が近づいているからか肌寒い。
薄手のパーティードレス1枚じゃやっぱり寒くて、肩にかけたストールを掴むと、きゅっ…と身を縮こませる。
……彼は来るんだろうか…?
同窓会は来なかったけど、今日は幼馴染の結婚式だからわけが違う。
変人だけど律儀な人だから、さすがに今日は来るんだろう。
会いたいのか、会いたくないのか。
自分のことのはずなのに、自分の気持ちがよくわからなかった。
ただ、わかるのは会ったところでもう今までのような関係には戻れないということだけ。
足を止めて振り向く。
かなり歩いたんだろう。
ここから見えるチャペルはずいぶんと小さくなっていた。
小さな鞄からスマホを取り出す。
あれからもう20分も経っていて、今から引き返せば着くのはちょうどいい時間になりそうだった。
コツン…コツン…とヒールを鳴らして、アスファルトを踏みしめるようにゆっくりと歩く。
まっすぐ続く道の先に人影が見えた。
その姿はどんどん近づいてきて、いつしか顔が見える距離になる。
………なんで
………どうして
そんな言葉が浮かぶけどひとつも声にはならなかった。
ただ高鳴る心臓の音がはっきりと自分で聞き取れるほど、胸が激しく波打つ。
「……作…間くん」
作ちゃんとは呼べなくて、作間くんと呼んだ。
「久し振り。…Aさん」
きっと彼はそれがわかっていてそう呼んだんだろう。
4年振りに会った彼は相変わらず人の心が読み取れるエスパーだった_
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです!!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです!! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった! (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時:2018年11月19日 11時