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学外研修当日。
その日は雨だという天気予報を裏切って、雲ひとつない快晴だった。
それは小春日和なんて優しいものじゃない。
照りつけるような日差しに、額に汗が滲む。
「あっつ…」
「ああーもうっ!しんどい!」
登山コースは初心者用だといっても運動不足の私にとっては過酷で、井上くんや岩山さんみたいに声を発する余裕もなかった。
「…っ!」
荒い息を整えていると、ズキっと痛む左足。
普段こんなに歩かないせいか、足はいつの間にか靴擦れをおこしている。
履き慣れたスニーカーを履いてきたはずなのに…
靴擦れなんて最悪。
談笑中の3人から少し離れたところでポーチから絆創膏を取り出すと、靴下をめくった。
左のかかと辺りに血が滲んでいて、見事に靴擦れしている。
傷を見れば見るほど痛くなりそうでそのまますぐに隠すようにして絆創膏を貼った。
「これでまだ半分とかありえない!無理!絶対無理!」
岩山さんの言う通りこれでまだ半分。
帰りはケーブルカーに乗るみたいだけど、行きは自分の足で登らなければならない。
各班ごとに自分たちのペースでとか先生達が言っていたから自分たちのペースで歩いたら、気がつけば周りに同級生達はいなくなっていた。
…おそらく私達は最後尾。
「だいたい紬は荷物が多いんだよ」
「なにその袋。いるの?」って井上くんがボヤきながらある一点を指さした。
岩山さんの小さな小さなリュックには入れたかったものが全て入らなかったらしく、彼女は右手にリュックよりも大きな紙袋を提げている。
「だってしょうがないでしょ!女子だもん。全部必要なんですー」
「だったらもっとでかいリュックにしてこいよ」
…正論だ。まったくその通り。
井上くんの言葉は正論すぎて痛いくらいだ。
でも岩山さんも負けていなくて、
「しょうがないでしょ!リュックはこれしかなかったの!」
なんて甲高い声で言い返した。
「そんなわけねーだろ!中学の時使ってたやつあるじゃん!」
「あんなダサいの無理!絶対いや!」
「その袋持ってるの方がダサいわ」
「はぁーあ!?」
二人の掛け合いはヒートアップして、もはや喧嘩だ。
これはいちおう親睦を深めるための学外研修。
喧嘩なら止めるべきか、どうすればいいのか困って見ていると、
「大丈夫だよ。これいつものことだから」
いつの間に隣にいたんだろう。
作間くんは私の心を見透かしたみたいにそう言った。
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです!!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです!! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった! (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時:2018年11月19日 11時