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ガラガラと音を立てて、教室へ続くドアを開ける。
一瞬だけ私を見た彼はまた本に視線を戻した。




「おかえり」

「ただいま。…あれ?二人は?」

「Aちゃんが遅いから迎えに行くって、ついさっき出てったよ」


きっと、瑞稀くんは紬が無理やり引っ張って行ったんだろう。
今出たってことは、しばらく戻ってこない。






2本のペットボトルと同じ数の缶を机に置いた私に


「なんかあった?」


本を見つめたまま作ちゃんが問いかけた。






どうして…?
どうして、いつも作ちゃんは気が付くの?
顔に出してるつもりはないのに、いつもいつも彼にはごまかしが効かない。






「ねぇ、作ちゃん」

「ん?」




紬でも、他の女友達でもなく。






「告白された……浮所くんに」



1番最初に伝えたのは、彼だった。
いつも私の隣にいて、私の全てを見透かしたみたいに笑う人。




「ふーん。そっか」

作ちゃんは視線を私に向けないで本を見つめたままそれだけ言う。








「…ねぇ…どうすればいい…?」


こんなこと作ちゃんに聞くのは違うんだろう。
そんなことはわかってる。





でも、“あの日”で止まってしまった私はもう自分一人じゃどうにも歩き出せなくて、

……1人で決めるのは怖くて、

臆病で弱虫な私はまた彼に助けを求めた。









本にしおりを挟んだ彼は、ゆっくりと私に視線を向ける。








「浮所は明るくて社交的だし、良い奴だと思うよ」









あの日、あの花火大会の日。






『いいんだよ。瑞稀くんのこと好きでいても』





作ちゃんが私に言ったその言葉は、まるで解けない呪縛のように今でも私の心に棲みついている。







それなのに、








「……いいの?…付き合って……」


「いいんじゃない?付き合えば」







そんな呪縛をかけた張本人は、そんなことすべて忘れているかのような声色でそう言った。









……ああ、痛い









その言葉に、ズキっと心が痛む。







瑞稀くんへの想いを断ち切りたいと思っていたはずなのに、

報われない想いを捨て去りたいと願っていたはずなのに、

彼の言葉と態度になぜだか私の心はキリキリと痛んだ。



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作品ジャンル:恋愛
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- 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです!!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです!! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった! (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09  
作成日時:2018年11月19日 11時

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