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そこからは覚えていなかった。
いつ寝たのかも、いつどうやって二人を誘ったのかも。
気が付いたら花火大会の日が来ていて、約束通り浴衣を着て、約束の時間に、約束の場所に行った。
「A、こっちこっち！」
顔に笑顔を貼り付けたまま手を振って、小走りで3人に近づく。
どんな顔をして紬に会えばいいのか、瑞稀くんと接すればいいのかずっと悩んでいた。
いつも通り、いつも通りと唱えながら、ひとつ深呼吸をする。
「A可愛い！」
「紬は大人っぽいね。すっごく綺麗！」
紬は紫に和柄の入った浴衣を着て、うなじが見えるように髪をアップにしていた。
瑞稀くんと作間くんもそれぞれの紺地のシンプルなデザインの浴衣を着ている。
「かわいい」
「え…」
作間くんからの言葉に驚いていると、彼はなんてことないみたいに「二人とも浴衣似合ってるね」と微笑んだ。
「ありがと。じゃあそろそろ行きますか！」
褒められ慣れている彼女はそれをサラッと流すと、私の手を取って歩き始める。
色々な屋台が並ぶ通りはたくさんの人で賑わっていた。
「射的やろ！勝負ね、勝負！」
「俺に勝ったことないくせに(笑)」
「今年は勝つから！……作ちゃん任せた！」
「えっ、俺なの(笑)」
まるでコントのようなやり取りを聞きながら、スマホで時間を確認する。
花火がはじまるまであと30分。
「あー！もう！作ちゃん下手(笑)」
「だったら紬がやりなよ」
「やだ。ふつーに負けるもん(笑)」
1歩後ろで3人を見守っていると「A、やる？」って振り向いた瑞稀くんが小首を傾げる。
「私は…」
「はい」って銃を渡されて、背中をぐいっと押された。
「えっと…」
射的なんてやったことがなくて困っていると、
「こうやって持って…で、」
手取り足取りとはまさにこの事ということくらい手厚く教えてくれる。
後ろに回った瑞稀くんがまるで私を包み込むみたいに腕を回すから、ドキドキして射的どころじゃない。
目を閉じて、ふーっと深く息を吐き出して深呼吸をする。
「脇締めて…よし」
瑞稀くんの言葉通りに脇を締めて構えると、そのまま引き金を引いた。
「…当たった！」
「すごい！Aなんで当たるの！？」
当たっただけで倒れなくて結局なにも貰えなかったけど、「すごいじゃん」って瑞稀くんが笑ってくれたから、
それだけでどうしようもない心が、どうしようもないくらいときめいてしまう。
……でも、もう時間だ。
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (
レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです！！！ (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです！！ (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった！ (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りゅりゅ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時：2018年11月19日 11時
