この恋の終わらせ方。〔完結〕

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「井上くん…井上くーん…」

授業と授業の間の短い休み時間でも、昼休みでも。少しでも時間が空くと井上くんは昼寝をしてしまう。



「…井上くん、起きて」

机に突っ伏して寝ている彼の右肩をトントンっと叩くと、「んっ…」開ききらない目で私を捉えた彼はそのままふわぁ…とあくびをした。




「川島先生が呼んでたよ。職員室来てだって」

担任が呼んでいたことを伝えると、聞いているのかきいていないのか。
机に突っ伏したまま井上くんは視線だけを私に向けた。






「瑞稀」

「…え？」

「瑞稀でいいよ」




体を起こした彼はぐーっと上に腕を上げて伸ばしながら「その“井上くん”っていうのなんかよそよそしいし」なんて言う。





「みず…き……くん？」

「いや、なんで疑問形(笑)」





男の子のことを名前で呼ぶなんて高校に入ってから初めてで、はてなマークが付くような呼び方になってしまった私を、彼はおかしそうにククっと少し声を殺すようにして笑った。



クシャッと細められた目。上がった頬。

男の子の笑顔を見て可愛いなんて思ったのは初めてだけど、心の底から可愛いって思った。



もっと見ていたいとさえ、思ってしまった＿＿









「早くその疑問形直してね」




ぽんぽんって私の頭で2回手を弾ませると、そのまま“瑞稀くん”は去っていく。

















少し口は悪いけど、誰よりも優しくて、

……笑顔が可愛い人。









そんな彼に好意を寄せるのにそう時間はかからなくて、気がつけば私は彼を目で追うようになっていた。


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