深澤センパイの思惑通り。［紫］ (ページ48)

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電話を切ったあと会社について、自分のデスクへ向かう前に寄った給湯室で、阿部ちゃんと遭遇。

阿「あ、ふっか。」

『ん？』

阿「昨日とスーツ、同じ」

『あぁ、泊まったし。』

阿「····Aちゃんとこ？」

ちゃんと周りを確認してから聞いてくるあたり、阿部ちゃんはちゃんとしてんなぁ、

『うん、まぁ。心配だったし』

阿「まぁ、その様子だとなんかしらあったみたいだね。それが進展したのか、してないのかは置いといて。」

阿部ちゃんは、俺の分まで珈琲を用意してくれて淡々と言葉を並べるから昨日あの場にいたんじゃないかと思わせるほど。

阿「あ、別に本人から聞いたわけじゃないから知らないけどね。」

『····ちょっと思い出しただけ、』

阿「元カノ？」

阿部ちゃんは、俺と長い付き合いが故、今までのことは大体知ってる。···· もちろん、元カノのことも。

まぁ、簡単に言えば遊び相手にされてた。

そもそも元カノとも呼べないのかもしれない。

『····なんか言動がちょっと重なった瞬間があってさ、』

阿「じゃあ、ふっかはそれだけで好きじゃなくなるの？」

『それは、』

少し重なって、怖くなった。また好きだって言われず体だけの関係が始まって俺だけが付き合えてるんだって勘違いして。

すっげえ虚しかったし、苦しかったし、辛かったし、ムカついた。

阿「あのね、俺はふっかに幸せになって欲しいの。俺は今、ふっかより近くに居るしふっかより一緒に過ごした時間が長いから分かるけど、Aちゃんは、ほんとに良い子だよ。前の人と比べるのは勿体無い。好きなら真っ直ぐAちゃんと向き合うべきでしょ。」

阿部ちゃんってさ、ほんとすげえよな。人のことは良く見てるし、仕事も出来ればモテるし、頭も良い。

奥さんと結婚してからも幸せそうで、俺も嬉しかったのをよく覚えてる。

だけど、阿部ちゃんの奥さんは1年半前に亡くなってしまった。事故に遭って。

それでも阿部ちゃんは変わりなく仕事をこなしてた。けど、俺らから見れば抜け殻みたいで、飲みに誘えばすぐ泣き崩れた。

やっと立ち直ったと同時にAちゃんが現れたんだ。

めちゃくちゃ阿部ちゃんの奥さんに雰囲気が似てた。

ふわふわしてるけど、しっかりしてそうだなって。