ドS吸血鬼に弱味握られて無理矢理契約させられた。【そらる】

2.参考書 ページ2

仕方ない、家に帰っても誰もいないし、また公園で参考書を読もう。






そう心に決めて、近くにある公園に入る。






もう夕方だから、公園はすっかり静寂だ。






『えーっと、』





今私にできるのは、勉強をたくさんして将来のために活用させることだけだ。





私はベンチに座り、鞄から参考書を取り出す。





参考書のたくさん張られた付箋も、書かれた文字も、私の今までの頑張りだ。





でもその頑張りを、誰も褒めちゃくれなかった。





私だって、誰かと和気あいあいと仲良くしたい。





私だって、誰かと疲れるまで遊んでみたい。








『お母さん…………吸血鬼さんに会ったら、何か変わるかな？』






ふと、吸血鬼を思いだし、そう言葉をこぼす。






吸血鬼と会ったら、人生が色づいて、楽しくなるだろうか。





悪役と、モブ役同士ならきっと、わかり会えると思うんだ。





まぁ、会いたいなんていっても、誰も来ないってことはわかってるんだけどね。





私はそう嘆きながら、参考書に視線をもど…………え？







『あ、あれ？……さっきまで参考書あったのに……え？お、おとしてないよね？』






鞄のなかを探しても、足元を見てみても、参考書は見当たらない。






何処かで落とした？でも、さっきまであったし……と、混乱しながらも周りを見渡すと、






参考書が開いたページのまま、ふわふわと浮いていた。







『なんだ、……参考書が浮いてるだけか……






っておい！！おかしいだろ！！重力逆らうな！！』






私は完ｯ全にキャラを崩壊をし、ムカつきながらも立ち上がって、参考書をとろうと手を伸ばす。





……が、その手は空を切り、参考書はすかさず移動をし始めたのだ。






『……は。


な、何！？参考書の分際で、今まで使ってあげた恩を忘れたの！？』





日頃のストレスだからか、更に声が上がってしまう。





私は怒りながらも、少し位置が高くなった参考書をとろうとまた手を伸ばしても、また空を切る。





参考書は私から逃げ回るようにして、シュッと移動を繰り返していた。







『ちょっ！！逃げないでって！……』






何度つかもうとしても、何度追いかけても、参考書はそれを拒む。





参考書にまで嫌われるなんて……






『……ああもう、ムカつく……』





私はそうこぼすと、









「……この参考書、返してほしい？」





何処からか、男の人の声が聞こえたのだ。

3.かくれんぼ→←1.ぷろろーぐ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す