結晶19粒 ページ20
─
『幸大、ごめん今日休む。先生に言っといて』
『は！？ちょっと薫！』
幾分か前の会話を思い出していると、体にごく軽い衝撃がつたわる。
「……あ、すみません、ここで降ります」
タクシーを降りると、目前のドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
「あの……すみません。花束をつくっていただけませんか。すぐに入り用なんです」
「大丈夫ですよ。どのような花束にしますか？」
「モダンローズと、霞草をお願いします」
「白がメインですね。差し色など、少し入れられると全体の色がひきしまりますが、どうなさいますか？
結婚式でしたらサムシング·ブルーを入れても素敵ですよ」
すいません。
生憎そんな華々しいものじゃないんです。
「……あ、この花入れていただけませんか。
1輪でいいので」
「はい、かしこまりました」
ふと目に留まった花に惹かれ、そう言った。
代金を渡し、店を出る。
「ここから葬儀場まで……」
病院からはほど遠い、施設が行き届いた所。
幸大に連絡を入れた後、ネットを駆使して探りあてた。
15分ほど歩き続け、葬儀場に足を踏み入れる。
丁度献花の時間帯だった。
人々は一瞥して同情と哀れみの視線を向けるが、私の左手を見た途端、怒りが混じった軽蔑のそれに変わる。
承知の上だ。白一色の花束は、葬式では縁起が悪いとされる。
ましてやモダンローズなんて派手な花、向いてないにも程がある。
それでもどうしてもこの花を手向けたかった。
8年前。
玲子さんが私に贈ってくれたあの花のように。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
camellia(プロフ) - すぃさん» 読んでくださりありがとうございます！ はーい行ってらっしゃいませ！！ (2019年10月20日 8時) (
レス) id: 3318b01060 (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - camelliaさん» 続編行って来ます！ (2019年10月20日 8時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - まるさん» 申し訳ありません、修正の際に誤って立ててしまっていました。ご指摘ありがとうございました。 (2019年1月2日 21時) (レス) id: 3318b01060 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい、違反行為です。外し忘れ、とかいう軽い意識はおやめ下さい。作品を消されても仕方のない行為です。オリジナルの新着に二次創作が上がってくる事を不快に感じる人もいます (2019年1月2日 21時) (レス) id: cec6dd7646 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：camellia | 作成日時：2018年7月11日 20時
