にじゅうわ ページ23
「で、何で
「それには、その、深い事情がありまして……」
志賀さんの部屋に連れて行かれた挙句に今は正座をさせられている。
志賀さんが嫌いだったらしい太宰くんが志賀さんに相談するほどには俺のことを心配してくれていたのだろうか。
いや、そんなの自惚れに決まっている。
じゃなきゃおかしいじゃないか、太宰くんがどうしてそこまでしておれのことを気にかけるのか。
関係すらなかったのに、こんな、何の才能もないおれを気にかける理由がどこにも見当たらない。
彼はおれのことを尊敬していると言ってくれた。
おれは彼の本を一冊読んだが、彼のことをもうすでに尊敬しているし、たぶん太宰くんの本を読んだ分だけ彼を尊敬するだろう。
だが太宰くんはどうだ?
彼はおれの最高傑作でも読んだのだろう。
そうして、おれを尊敬するようになった。
だから、おれのほかの作品を読んでしまったら尊敬の念は薄れていくだろう。
そんな作品しか書かないようなやつのことを心配する必要などどこにあるだろうか。
答えは「どこにもない」だ。
そんな義理など存在しない、存在してはならないのだ。
「ふーん、詳しく」
「司書さんが来た日がありましたよね、その日に__」
できる限り正確に覚えていることを志賀さんに話し、自分にこのことを知っていることがばれたら龍たちが絶筆してしまうかもしれないことも洗いざらいすべて。
「司書さんにばれないようにしてほしいことはわかった。それで、何で龍たちには秘密にしたいんだ?」
「本当は志賀さんにも秘密にしておきたかったんですけど、いらない心配をかけたくなかったですし、司書さんの性格はあれですけどおれと話しているよりは数倍ましですから」
志賀さんのすごく怖い圧に思わず目をそらしながら答える。
こっそり覗いても不服そうな表情は健在しており、崩れそうにも納得した表情にもなる気配がない。
ん? 不服?
いや、何で。
あ、やっぱり龍にひどい態度をとったことに怒っていらっしゃる???
龍にも太宰くんたちにもひどい態度をとってることぐらいわかっているよ。
「龍たちには本当に申し訳ないと思っていますし、彼らを傷つける方法しか思いつかなかった自分が不甲斐ないです。でも、せめて志賀さんが司書さん側についてくれれば中立にいる人、もしかしたら新思潮ぐらいは司書さん側に回ってくれるんじゃないかって思ってるんです」

14人がお気に入り

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんしゅ(プロフ) - しばらく更新停止するつもりです。ほんとすみません。できるだけ早く投稿できるようにしますので、待っていてくださると嬉しいです。 (2022年2月11日 17時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
文ストファン - いつ見ても面白い!!!!!! (2022年2月11日 14時) (レス) @page27 id: 643207991d (このIDを非表示/違反報告)
のんしゅ(プロフ) - わぁぁぁ! ありがとうございます! すごく励みになります! 若輩者ですが、頑張って投稿始めようと思います (2022年1月30日 22時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
文ストファン - ヱァァァァァァァァァァァァァァァァ素晴らしい作品ありがとうございます! (2022年1月30日 21時) (レス) @page27 id: 9e1177ce22 (このIDを非表示/違反報告)
のんしゅ(プロフ) - 十話ごとに閑話休題を入れるつもりです。もし短編リクがあればコメント欄かボードにお願いします。 (2021年6月6日 13時) (レス) id: b8f455d9e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ