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コレほどまでにクレアさんの存在に感謝したことはない。
「むぅ……」
「では、賠償額は60Gで。ウラタ様も、6000Cでよろしいですか?」
「もちろん」
これで話し合う内容は終わりなはず。
後は、葬儀とメンタルケアの問題が残っているが、それは後回し。
そんなのにかまっている暇はない。
賠償金は件の魔族の遺族と国の折半。
葬儀代はそれぞれ人族側を加害者の属する国家が、加害者はその遺族が出すはず。
条約にそのように書いてあった。
「他に何がございますか?」
「特にない」
「こちらも問題ない」
「それでは、人族、魔族間の会談を終わります」
これでようやく終わったか。
やっと、と言いたいところだ。
さして長い時間でもなく、ほぼ予定通りにことは進んだ。
話し合う内容も多くなかった。
だと言うのに。
この階段が終わった途端に堰き止められていた疲れの波が溢れ出したような感じだ。
はじめての外交ということもあってだろうか。
思ったより緊張していたらしい。
しかし、ワーウ怪我が出張る外交と言うのは主に魔族を相手にする、他種族との国家的な話し合いだろう。
だから、さすがにすぐにはこんなことは起こらないだろう。
「おつかれ〜、ルシフ、ゼオル。クレアさんも」
「私はコレを清書する役目がありますので」
「あぁ、よろしくお願いします、クレアさん。人族語はこちらの方で書きますので、おれも行きます。魔族語の方も一枚印刷お願いします」
クレアさんの了承した言葉を聞き入れ、もう一度お願いしますと言っておく。
おれはこのあとまだ、クレアさんの写したものが正しいとか、印刷とか、そういう諸々を受け取って帰らなければならないのだけれど。
そもそも、速記の文字は同じでも、種族ごとで違うから、二種類できるのだけれど。
ウラタ様とゼオルは必要ないから帰ると思うが、もしかしたら俺も残る、とか言い出す可能性が出てくる。
「え、ルシフの残るの? 俺も残ろっかな」
「ならばオレも残ろう」
あぁほら、やっぱりそうだ。
最近ウラタ様のことがわかってきた気がする。
ウラタ様のことが分かってきたということは、彼と親しくなってきているということで、ワーウ家としてはメリットしかないが、王家はデメリットばかりだ。
受けられるメリットらしいものと言えば、我が家の戦力くらい。
それも、そんなことをしなくとも無償提供とほぼ同義だ。
おれたちは迫害されないだけ良いのに。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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