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静かに畳に腰を下ろした亮平は、一つ息をつくと、辰哉の脇腹を這う紫色に手を翳す。其の手からほわり、と新緑色の光が漏れ出す。
照と康二、蓮が少し離れて手に力を込める。其れは、術に呼応するように、少しずつ妖力が漏れ出ているのを、少なからず感じたからで。
亮平の額に汗が浮かぶ。ぽろり、と零れ落ちた其れが、小さく上下する菫色に小さな染みをつくる。其の刹那、膨大な妖力と共に風が吹き荒れる。
康「、っ！あべちゃ、」
蓮「…大丈夫、多分、あれが『本体』だ。」
照「術であの大きさとか…どんだけ妖力持ってやがったんだ…っ！」
亮「っ…でて、きた…っ！」
辰「…っ、ぐぅ、っあ…！」
苦しそうに体を丸めた辰哉の奥に、亮平の身長の半分はあろうかという頭の、紫色をした蛇が現れる。その体の先は、辰哉の脇腹から這い出ていた。
其れと対峙するように立ち上がった亮平の着流しが揺れる。手に持った、上等な白鞘の刀を持ち上げると、目を閉じたまま何事かを呟いてゆっくりと鯉口を切った。
亮「…我が偉大なる大天狗様、どうか力を御貸しください。」
すらりと抜かれた刀身は、部屋に立ち込める禍々しさとは反対に、瑞々しく美しい姿を晒しだしている。刀の気に当てられたのか、蛇が苦しげに見悶えた後、怨めしげに睨み付けて亮平に襲いかかった。
亮「…『飛天･清流ノ禊』」
たんっ、と畳を蹴った亮平は、静かに目を閉じて刀を横凪ぎに一閃する。刀の道筋を開くように、ぱくり、と蛇の体が二つに切れた。
刹那、部屋に悲痛な呻き声が響き渡る。其れが小さくなっていくのと比例するように、紫色の気も薄れていった。
蓮「…ほんとに、実体がないものを、切った…」
康「凄い…って、そうだ、ふっかさん！」
遠巻きに見ていた三人も駆け寄る。照が、辰哉の体を仰向けに直すと、白い脇腹に鎮座していた蛇は消え去っていた。
亮「っよかった…」
康「っあべちゃん？！大丈夫?!」
膝から崩れて座り込んだ亮平に康二が慌てて手をさしのべる。亮平は、手をとるとふわりと笑った。
亮「大丈夫、安心して力抜けちゃっただけ。」
康「ならええけど…無理せんといてな？」
微笑んだ顔に、消えそうな危うさは見当たらない。
亮「…起きたら辰哉にお説教かな、優しすぎるのも考えものだよ、って、ね。」
照「それは同感…ほら、早く起きろよ、ふっか。」
台詞とは裏腹に柔らかく落ちた声音が、風に凪ぐ。ふわり、と撫でられた菫色は、まだ静謐を保ったままだった。
終
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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
