終章 ページ36
辰「そりゃ、俺だって、未だに妖のことなんて良く分かっちゃいないけど…でも、康二くんが優しいのは分かるから。…ちょっとずつでいいから、その…仲良く、したいな、とか…駄目？」
康「……！」
小さく目を見開いて俯いた康二に、もしかして距離を詰めすぎただろうか、と辰哉が髪をくしゃりと握る。次に言うべき言葉を探して空中に視線を投げた。と、
康「…康二。」
辰「っ、え？」
康「…ちゃんと康二って呼んでや。めめたちだけ呼び捨てなん…ずるいやんか。」
ぷいっ、と横を向くと、耳が少し赤くなっていて、辰哉は思わず小さく吹き出す。其れを咎めるようにちらり、と此方を見た康二は、踵を返して子供達の手を繋いだ。
康「…ほら、さっさと帰らんと、日暮れるで。って、めめ！しょっぴ！何笑っとんの！あぁもうだてまで…っもう知らん！照にぃ、帰ろ！」
すたすたと足早に山を降りていく康二の後ろ姿が木漏れ日に照らされる。楽しげに笑っていた妖達も、各々手を繋ぐと紅の目を夕陽に透かしながら山を降り始めた。
ーーーーーーーー
もも「っさき！」
さき「おねえちゃん！」
道の真ん中で抱き合う姉妹を見て、照も辰哉も口角をあげる。他の妖達も、手分けして村の彼方此方で子供達を家に帰しに出掛けている。日は、随分と暮れかけていた。
もも「っあの、ほんとに、ほんとにありがとうございましたっ！それで、あの、お金を…」
照「お代はいいよ、俺らも一寸手間取っちゃったしね。」
もも「でも…！」
照「いいから。…妹さん、無事で良かったね！」
ふにゃり、と笑った照につられて、安心したように二人の少女も笑う。ももはもう一度頭を下げると、妹の手を引いて家の中へ消えた。
照「よっし、じゃあ俺らも帰るか…って、ふっか？どうかした？」
踵を返して歩き出そうとした照は、隣で俯いたまま動こうとしない辰哉の顔を覗きこむ。ふい、と目を逸らした辰哉は、いや…と言葉を濁す。
辰「…分かっちゃいたけどさ…俺、ほんとに何もできないな、って…っごめん、やっぱなんでもない。」
帰ろ、と笑って振り向いた辰哉の頭に黙って手を置くと、あのさ、と言いながら照は顔を覗きこむ。
照「前も言ったろ…ふっかにしかできないことだってある。…お前は黙って俺に守られてればいいの！ほら、帰るよ。」
辰「…っ！分かってる！…帰ったら亮平に護符の作り方、教えてもらお。」
夕焼け空に烏が鳴く。主を失った山の向こうに、朱色がゆっくりと沈んでいった。
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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
