、 ページ34
途端に立ち込めた霧に妖達が眉をしかめていると、霧の中からざわざわ、と声が聞こえ始める。未だ年端も行かない幼子の声だ、と気づいた辰哉が霧を掻き分けて前に進むと、其処には。
辰「え？！さっきまで誰も居なかったのに…！」
亮「辰哉の読みは当たってたみたいだね…でも真逆、こんなに居るとは…」
少し開けている祠の前の草むらに、ラウールよりも幼いであろう子供達が十幾人か座り込んでいた。特に傷も見当たらず、気を失っているわけでも無さそう、ではあったのだが。
佐「なんか…楽しそうじゃない？あの子達。天狗に拐われたにしてはさ。何かもっとこう…泣いてる子とか居るのを想像してたんだけど…」
蓮「其れは同感。怪我してる子も見た感じいなさそうだし…あ、彼処の薄葵の着物着てる子、依頼者の子が言ってた妹さんっぽくない？」
蓮が指差した先には、朝顔が良く映える薄葵色の着物を着た幼い女の子が、しゃがみこんで地面を眺めている。
確かに依頼人のももちゃんも色違いの着物着てたね〜、と佐久間が歩き出そうとした時、目線の少し下をふわふわした頭が通り過ぎて、思わずえ？と声が漏れる。
辰「っちょ、ラウール？！」
思い思いに遊んでいる子供達の間を縫って女の子に駆け寄ったラウールは、不思議そうな顔でこちらを見上げる女の子に笑いかけると、しゃがみこんで目線を合わせた。
ラウ「こんにちは！僕ラウって言います。お名前、教えてくれない？」
こて、と首をかしげて笑いかけると、女の子もつられてにこり、と微笑み、着物の裾を少し持ち上げて立ち上がる。
「さき！さきっていうの！」
少女が告げたその名前に、思わず妖達が顔を見合わせる。ちらり、と此方を見たラウールは、そっか、と言って少女に向き直った。
ラウ「さきちゃんか！ねぇねぇ、お父さんとお母さんは？何でここにいるの？」
「わかんない…天狗のおじちゃんが、あそんであげるってつれてきてくれたの。」
辰「！大丈夫？天狗に何もされてない？」
血相を変えて飛んできた辰哉の剣幕に、少女の顔が若干強張る。ラウールが少女の手を握ると、少し安心したのか首を振った。
「天狗のおじちゃん、いっぱいあそんでくれたよ！みんなにおなかいっぱいごはんくれたもん！」
辰「え？…天狗が？」
「うん！」
其れを聞いて辰哉は妖達の方を振り向く。周りの子供達に聞いていたらしい康二や佐久間、亮平も目を見合わせている。古びた祠に、ふわりと風が吹き抜けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1063人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
