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タクシーに揺られて、
外を眺める。
リュックの中には財布と携帯と、
僕の好きなもの。
「お客さんのおったあの周辺て、つい昨日物騒な事件があった場所の近くやないですか?」
運転手は続ける。
「ほらあの、近所から異臭がするーて通報で、中調べたらそりゃあもう無残な遺体があったって。」
「…ああ、そんなのありましたね。」
「皮も剥がれて内臓までって言うとりましたね。
あんなことする人間がおると思うとゾッとしますわ、全く。」
「…相当な恨みでもあったんでしょうね。」
「しかしまぁ、片方の遺体が行方不明ってのもなんかつっかかりますなあ。」
「…何か大事な理由があったんじゃないですか?」
「うあぁ、えらくきしょい話ぇ、考えたくもないですわ。…ほい、着きましたよ。」
お金を払って、
タクシーを降りる。
とても身軽だ。
心は綺麗に澄んでいて、
何の不平不満もない。
明日も生きれる。
明後日も、
一週間後も、
一ヶ月後も、
一年後も。
血の匂いは全てをかき消す。
乱れた思考も、
崩れゆくよろこびも、
貧欲な心も、
傲慢な口振りも。
「…逢えて嬉しいよ。A。」
君の血液は、
全てを浄化する。
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鹿野ユズナ(プロフ) - 前回の合作が……読めない………こんなに素晴らしいのに……!気になるのに………!!心を奪われてぼんやりしてしまいます。気になる。魅惑的な作品でした。ありがとうございます。 (2020年10月9日 16時) (レス) id: 6c05b173a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らふぁえるsk&雪兎-ユキト- | 作成日時:2019年5月25日 18時