黒の時代の四人目。【文スト】【死ネタ】 (ページ18)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:12,906 hit

第十八篇　裏切者ページ18

·

ガランガラン、と"ルパン"の扉の鈴が鳴る。

「……ん？やあ、どうも。お先にやってますよ」

「………連絡位くれても善かったんじゃないか？」

「尾行を撒くのに苦労しましてね。でも今日は大丈夫です。ゆっくり飲める。……其れで？如何して此処が判ったんです？」

「何となく……ね」

四人の間に静かな空気が流れる。

沈黙を破ったのは、坂口だった。

「……僕はツイてる。此処で飲める事はもう無いと思っていました」

「潜入捜査官にしては、随分センチメンタルじゃないか。……君はポートマフィアに入る前から、別の顔があった。其れは国の秘密機関───

内務省、異能特務課のエージェントとしての顔だ」

徳富がヒュッと息を呑んだ。

「君の任務はポートマフィアの動向の監視。国内の異能力者を統括する秘密組織と云えど、ポートマフィアと全面戦争となれば只では済まない」

太宰が言葉を続ける。

「そもそも特務課の任務は異能力者の管理だ。殲滅じゃない。だからポートマフィア内にエージェントを潜入させ、動向を監視させていた。そして其処に──ミミックの話が持ち上がった。

日本上陸を計画していた異能犯罪組織は、特務課からしても頭の痛い存在だ。其れで君にミミックの動向を探らせる事にした……ポートマフィアのスパイとしてね」

「……薄給の国家公務員としては、全く割に合わない仕事でしたよ」

「詰まり安吾は二重スパイでは無く三重スパイだったと云う訳か」

織田はそう云うと、酒を口に含んだ。

『……ミミックについて教えて』

「ジイドと織田作さんが会敵したと云う情報が入りました。ジイドの異能力は見ましたか？」

「見た」

「ジイドは神出鬼没で、居場所を悟らせません。上はこの件を、完全にポートマフィアに投げる腹積もりです」

『それは又随分と都合の善い話ね。けどポートマフィアにしたって、あの異能力を突破するのは難しいと思う。勿論、一人の最下級構成員を除いて──だけど』

徳富がちらりと隣の織田を見る。

「……俺の異能力も奴の異能力も、ほんの数秒先が予見できるに過ぎない。結局の処、勝敗は戦闘と射撃の技量に掛かってくる」

織田がそう云うと、坂口はグラスから口を離して云った。