第一章 4 ページ5
「喧嘩してないですから」
「うん」
「本当ですからね?」
「はいはい」
「絶対嘘だと思ッてますよね、星彩さん!」
首領室に向かう私の一歩後ろを付いてくる少年は、少し顔を赤く染め、怒ったような声色である。
私は軽くあしらいながら、無駄に豪華な廊下を歩いていく。
…にしてもこのちびっ子
幾ら首領補佐とは云え私は首領程冷酷では無いし、首領と云えど任務に支障をきたさない程度の喧嘩・怪我ならば、何とも云わない筈であって(何しろあの二人の喧嘩は日常茶飯事なのだ)、此処まで必死になる理由が見当たらない。
詰まり、
「中也ったらホント私のこと好きだよね。」
「はッ…!?なッ、何云ッてるんですか!確かに星彩さんのことは敬愛していますが…」
「ふーん、私のこと好きじゃないんだ?」
「厭、好きですけど!!…あ。」
仕舞った、という顔をする中也に、私は可笑しくなってきて、くすくすと笑う。
と、其処に全て聞いていたらしい治君が前方…詰まり、首領執務室の方向から近づいてきた。
…悪戯好きの少年のような笑顔をその人形のような綺麗な顔に張り付けて(最も、「ような」じゃなく治君は本当に悪戯好きなのだが)。
「ふーん、中也って星彩さんのこと好きなんだぁ〜〜」
「くっそ、一番聞かれたくなかった奴に!」
「あっれぇ、そんな事云って良いのかい、ナカハラ君?昨日の
「くッ…!手前ェ太宰、お前だけは絶対何時か殺す!」
顔を真っ赤にして怒る中也と、涼しい顔をして言い返す治。
彼等を、仲間内では「双黒」と呼ぶ。
この二人は、ポートマフィアきっての戦力と頭脳の持ち主の最恐最悪の組み合わせで、この街でマフィアに逆らえば、この二人も敵に回すことになり…この街の実力者の中でも上から数えた方が早い私と云えど、確実に勝利は出来ない。良くて相討ちだろう。
けれど、そんな双黒も一旦仕事を離れれば、普通の少年である。
内容は少々特殊だが、レベル的には其処等の少年同士の喧嘩と大して変わらないのであった。
私はそんな平和な彼等を、少し微笑みながらみていたその時……背後から、強い衝撃を与えられた。
「……!?」
私は其れなりに強いし、敏感な自負もある。
だと云うのに、全く気配を感じ取れなかった。
その事に恐怖を感じて振り返ると、其処には…____
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月27日 16時