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第四十四桂 : 当たり前のこたえ ページ47

―――厨までたどり着き、
さすがに桜夜はあっけにとられた。

「あぁ、よかった!
無事に出られたのね!」

確かに嬉しげな彼女がいた。
―――その感情は、どこへ向けてのものだったろう。

「・・今回のこと、本当に、申し訳なかった・・」

心底、申し訳なさげな彼がいた。
―――その感情は、確かに俺に向けてのものだったろうか。


「・・さ、こんなもので申し訳ないが、
せめて、今回くらいは手を付けてやってくれ」

燭台切が羽織んできた膳には

練り物と大根おろしの煮込み、
白菜と鶏つみれの味噌汁がのっていた。

「主が手に入れた鶏を、畑の野菜と味噌汁にしてみた。
大根おろしの煮込みは、なかなか悪くない出来だと思うけど・・」

―――それは少しだけ、彼がこちらに歩み寄ったようにもみえた。
そしてそれを、彼女が許したようにも。

視線をむければ、左文字も小狐丸も、穏やかに微笑んだ。

―――それなのに
何故だろう。

「・・光忠は、気のいい男だな」
「ッ!」

三日月は
それさえも気に障ったと言わないばかりだった。

「・・・いただくよ」

膳を受け取り席につく。
随分と久しい手料理だった。

「・・美味しい、」

―――食事を終えるまで、燭台切は三日月に怯えていた。

(自分で、すすめたことじゃないのか?)

三日月の様子に思考の奥では首をかしげるが、
―――同時に、ミハナに聞いてみたかった。

「・・一期一振は、どうなっているんです」
「一期・・・?」

彼女は一度振り返る。
しかしすぐに眉をよせた。

「明日、遠征にいかせるわ」

帰ってきたのはそれだけだった。

「・・・遠征・・・?」

ぞっと、した。

――折れてはおらぬよ、
そう笑った三日月の言葉を思い出す。

"折れてはいない"状態で、遠征。
――嫌な、いやな汗だった。


会わせてくれと、気付けばそう口走っていた。



―――・・

「・・ぐっ、」

一期一振は重傷の一歩手前まで、追い込まれていた。
唖然とした。
彼は恐らく古株にはいる一振りで、練度こそあれど、
とても遠征にいかせることが、出来る状態ではない。

「なんて、ことを、・・」

愕然と歩み寄って、

「・・っどうして、こんなことを?」

震える声で彼女を見上げた。

「・・だって、」


彼女は気を悪くした様子もなく。
――そして僅かにも悪びれることなく。


「三日月がそうしろっていったのよ」



当たり前に回答を寄越した。





――― 一期一振には
その日のうちに手入れを施した。

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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛/男審神者主   
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・!いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます! (2015年12月7日 7時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・!ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね!ありがとうございます! (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています!これからも頑張ってください! (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます! (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました!三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年9月25日 22時

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