第四十一桂 ： すべてが歪なのだから ページ44
―――思考が追いつかなかった。
予想外の、出来事だった。
そして顔を上げてはっとした。
―――正面扉に着いた時点から感じていた、視線の相手。
「・・一期一振・・？」
「ッ！」
びくり、名を呼んだ途端彼は肩を揺らした。
途端、外された視点。
――まさか、彼は、
「あんた・・こうなるかもしれないって、知っていて・・」
「・・・」
かたくなに口を開かない一期だった。
問いただすことを諦めて、小狐丸に肩を貸す。
直後、左文字が、珍しく表情を変えて、駆けおりてきた。
「主！」
場所など選べない。
彼らの視線を完全に無視して、手入れ部屋に向かった。
「・・・・何故、」
階段まで来たとき。
驚愕した三日月の声が聞こえた。
―――どういう意味なのか、
その顔を見ていないから、わからなかったけれど。
―――研修生と近侍が小狐丸を連れて、手入れ部屋へと去った直後だった。
三日月が出陣部隊の前に現れた。
「・・まさか、お守りを持たせるとは、思わなんだよ」
三日月の言葉に、ぎょっとしたのは燭台切だった。
「・・三日月？
まさか、小狐丸がああなると、
わかっていて出陣させたのは・・君なのか・・？」
「はっはっは、小狐丸か、そういえば、そんな名前であった気もするなぁ」
「・・待ってくれ、じゃあ、一期・・？
君はそれを知っていて、理解した上で、
――三日月の意見を、主に伝えたのか・・？」
「・・・」
一期は口を閉ざしていた。
が、すぐさま唇をかみしめて、
廊下を駆けだした。
「・・・・やれ、」
彼を見送った三日月の言葉に、燭台切は戦慄した。
「狐を、壊せなんだなぁ」
―――
手入れ部屋に駆け込み、桜夜は小狐丸の本体をたてかける。
同時に、ひび割れた刀身の手入れにはいった。
「・・なんで、こんなことが、」
同じ本丸の住人で。
仲のいい者同士ではなかったのか。
むしろそれは、やはり小狐丸が、
自分の傍にいたことが原因なのだろうか。
―――小狐丸。
かなしくはないのだろうか。
閉ざされた瞳に問いかけて、戻る筈のない答えを期待した。
―――ばたん。
それはあまりにも
軽い音だった。
「・・・え？」
湿気が辺りを覆っていた。
音は聞こえない。
「・・馬鹿な、」
声を上げたのは左文字で、
桜夜は
「―――おい、――？」
錠前が落ち、閉ざされた扉に唖然とした。
「・・悪いのは、貴方です・・！」
押し殺した声は
あの日の彼と同じだった。
「一期一振・・・！？」
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
