ー 第三特異点 3 ー ページ4
嘆きそうな眼差しを向ける立香を通り越し、
微笑ましく見守るロマ二を見遣る。
(凄い人だな・・・)
ロマ二の表情に、
先程までの疲労や翳りは見受けられなかった。
彼自身、しかし確かに、
その様子を楽しんでいるのだろう。
秋は、そんな、先程までの彼のことを、
今だけは、見ていないものとしておいた。
「それにしても、海ですか」
マシュが復唱する。
「あぁ、どうやら、
特異点を中心に、地形が変化しているらしい」
具体的に、
『ここ』と決まった場所ではなさそうだ、とロマ二は語る。
「その海域にあるのは点在する島だけでね。
至急、その原因を解明して欲しい」
「了解です」
秋の回答の後、
「まさかとは思うけど、
移動した先は海の上、なんてことは」
立香の不安そうな言葉がかかる。
さすがにロマ二も、
それはない、ない、と答えた。
「ちゃんと考慮しているよ。
最悪、秋君の手を借りるかもしれないけど」
「なるほど。了解です。
無理からにも陸上へ飛ばしましょう」
「ならばマスターの身の安全はこのアルジュナにお任せを」
「うん、任せた」
「待って、なんか逆に凄い不安」
そんな立香に、笑顔でグッと親指をたてた。
立香の表情は晴れなかった。ーー解せぬ。
「準備はいいようだね。
それじゃあ、三度目の聖杯探索、開始しよう」
肩に乗っていたフォウを腕に抱えた。
立香たちが用意されたコフィンに入っていく。
「ーー君はやっぱり生身のままかい?」
扉が閉ざされたことを確認し、
ロマ二が秋に問いかけた。
「ーー・・ええ。
俺たちの存在を証明し続けること、
それは貴方の負担の量(かさ)増しになる。
そんなことくらい、わかりますから」
「・・・キミ、本当によく見てるよね」
「アルジュナ(彼)のマスターですから」
そして秋は、
『アルジュナを連れて』、
『彼らと同じ特異点』に向かう。
必ず戻る、と、そう、
ロマ二・アーキマンと約束して。
「・・・ああ。待っているとも。
君と、君たちの帰りを、僕は、待っているからね」
こうして、第三特異点、
ーーオケアノスでの旅路が始まった。
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作者名:遊藍 | 作成日時:2019年5月4日 21時