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ー 第三特異点 12 ー ページ13

ーー仮に。

あの本の精の話のように
もし、彼と出会ったのが俺ではなかったとしよう。

そしてあの時示唆された未来の他にも、
彼の未来が用意されていたとしたら。

そのどこかなら、彼は「アルジュナ」として
正しく幸せな未来に辿りつけたのだろうか。

ーー幸せなど本人の価値観によるものが大きいが、

だとしても、
彼がこの未来を幸せだと感じるのは

それ以外に見たあの未来が
それ以外に知ることの出来た結末が

あまりにも残酷だったからだろう。

(恐らく、)

きっと彼は辿りつけただろう。

そう、それが。
ーーそれこそが、己の進む道なのだ。

己は彼のそんな未来をひとつ。

そんな彼の。
あったかもしれない未来をひとつ。

これまでの彼らと同様に、
奪い、踏みつぶしたのだ。

(だからこそ)

彼の進むべき先途に待つ己への感情は
その元凶である己で正すべきだ。

歪に捻れた末路など
彼に迎えさせるにはあまりにも悲しい。

それが彼の未来を奪い取った己の責務だ。

彼の未来を奪い取ってまで手に入れた、己の安寧。

ーーそれが、
彼のマスターとしての務めなのだから。





ーー「んん?」

対峙し、対処した対象に違和感をもった。
首を傾げていると、
同様に首を傾げるドレイクの姿が目に入る。

「なぁんか、
倒した連中が消えちまったんだが、
これは、あんたたちにしてみれば日常茶飯事なのかい?」
「・・・いえ、妙な敵対勢力でした。
ここまでの戦闘で見たことはありませんね」

通信機につなぎロマ二へと意見を求める。

『うん、そうだね・・
ここにあったのは多分、
海賊の概念のようなものなんだろうね』

ーー大航海時代。

その記憶に刻まれた一種の霊体。

役割を果たすためだけに、
存在、行動しているような、そんな。

『勿論、多少の自我はあると思うけど、
それも均一だろうね。
「平均的な海賊」の無限コピーとでも言うのかな』

いわく、害そのものは小さいが、
時代の修正を完了しない限り、
それらは無限にうまれ続けるだろう、とのこと。

「要するに幽霊のようなもの、でしょうか。
それも、
銃弾や攻撃の通じる、実体のある幽霊」

秋の言葉を聞いたドレイクの表情が明るくなる。

「あるんだ、実体!
攻撃が通じるならオッケー!
なんの問題もないね!」

まぁ、確かにその通りだ。
攻撃が通じるのなら、倒せる。

問題はないだろう。

彼女は、その確信が欲しかっただけのようだ。

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作者名:遊藍 | 作成日時:2019年5月4日 21時

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