15 ページ16
．
駅のホームを出ると彼は立ち止まり、握っていた私の手を離した。
「俺な、Aの事ホンマに好きやねん、多分しばらく忘れられん」
いつもみたいに泣かないで言うものだから戸惑った。
どんなに頑張ったとしても私の中には兄がいる事を拭うのを諦めたのかもしれない。
「だから、振って欲しいねん、出来るだけ酷く、
やないと俺、諦めきれんもん、ずっとずっと、俺だけ前に進めなくなってくねん、」
3年前から知っていた最善策を目の前に突きつけられた。
『愛せなくて、好きになれなくてごめん、隣にいてくれてありがとう』
「…出来るだけ酷くって言うたやんか」
顔を歪ませて俯く彼はきっと泣いているのを見せないようにしているのだろう。
優しくて面白くて大切だった人であった。彼と過ごした3年間、は脆いガラスのように砕け散った。でも私にとっても彼にとってもいつかは砕け散ったガラスを拾い集めて美しい思いでに変え、きっと誰かに綺麗でしょ、と自慢するのだ。
『また会える？』
「お前よりごっつう美人の彼女作ってからな、」
『何年後だろ』
「そういうとこ、ホンマに好きだったで」
涙が溢れそうな顔を見せ彼は無理に笑顔を見せた。
「ほら、迎え来たで」
私の後ろを指差して彼は涙を落としたけれど、私はそれを見ないふりをして走り出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プラム - 返信ありがとうございます。ヨモギさんの作品好きです。これからも楽しみにしています！ (2019年8月29日 0時) (
レス) id: bd64163aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ(プロフ) - プラムさん» プラムさん、コメント有難うございます。私も岸くんは普段考えてないように見えるけれど実は誰よりもグループのことを考えて行動している気がします。お気に入りのシーンを好きと言って下さって嬉しいです、有難うございます！ (2019年8月28日 9時) (レス) id: f404b9d437 (このIDを非表示/違反報告)
プラム - 岸くんは太陽みたいな人だけど、月の様な部分もあって。メンバーの誰よりも現実的に物事を捉えているように感じます。お話の中でリアルな岸くんを感じてドキドキしました。車の中でのシーン、私も大好きです。何とも言えない感情が沸き上がってきて、胸が熱くなりました (2019年8月27日 18時) (レス) id: bd64163aa1 (このIDを非表示/違反報告)
海里(プロフ) - ヨモギさん» いえいえ！返信ありがとうございます！！ (2019年7月22日 17時) (レス) id: 5be75b73df (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ(プロフ) - 海里さん» 海里さんありがとうございます、そう言って下さって嬉しいです！ (2019年7月20日 14時) (レス) id: f404b9d437 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヨモギ | 作成日時：2019年7月17日 11時
