優等生くんの裏の顔【knmc】

39:幕引き ページ39

刀也君達の別れの挨拶。
部外者である私は邪魔をしないよう、黙って見届けた。

思っていたよりも挨拶は軽くされていく。


…寂しさを感じてしまうのは間違いなのか。


淡々と進められる挨拶。
私だけ置いて行かれているような感覚。



皆を一周し、刀也君が締めくくった。



相変わらず、話すのもまとめるのも上手。




『この中で過ごした日常は価値あるものだった』




刀也君の最後の言葉。

皆もやっぱり、報復の中で楽しい日々も過ごせていたんだ。
普通の年頃の人たちのように。

なぜか、酷く安心する。


この人達もちゃんと子供だった。
ちゃんと子供のような無邪気さはあったんだ。

皆はそれぞれの方向へ背を向けて歩き始める。
後ろ姿が寂しく思えた。




「…改まってお別れしなくても良かったんじゃないの？」




その場に残ったのは私達だけ。
刀也君に視線を向けると、クスッと笑っている。




「一旦、ね。いつでも会えるさ」




…なんだ。刀也君も寂しいんじゃないか。
なかなか素直にならない彼の核心を見た気がして思わず微笑む。



「…みんなと、友達になりたいね」



ふと、口から溢れた。
あくまでも部外者視点だが、彼らは友達ではなかった。




『同志』というやつだろうか。




彼らに友達同士のような馴れ合いは少なく、お互いに一線引いている。
友達じゃないけど、仲間のような空気を感じた。
同じ志を持つ人達が集まってできた組織。


…私が暴走していた時の京子さんの判断。


よく言えば冷静な判断。
しかし、裏を返せば刀也君を見捨てるのと同じ行為だ。
あの状況でそれができるのは割り切っているから。




「今度は友達で、集まれたらいいね」




私達はまだ未成年。
同志だなんて割り切った関係なんて持たなくていい。

年頃の子供らしく、友達でいいんだ。




「…そう、だね。

　今度は友達として、あいつらと遊ぼう」





刀也君の言葉に笑顔で返した。

その時、実験室から微かに物音が聞こえる。
一瞬にして警戒態勢をとった刀也君。



ここには倒れている黒スーツの男達が山ほどいる。
目を覚ましたら面倒だ。


私達は視線を交わし、頷いた。



足音を立てないように素早く建物から抜け出す。
建物から出る直前、振り返って周囲を見回したが母親の姿はなかった。




…どこに、行ったのだろう。




隠れているのか。
隙を見て逃げ帰ったのか。

どちらにせよ、関係ないか。







＿＿＿怒涛の数日間に、蹴りがついたんだ。

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