優等生くんの裏の顔【knmc】

26:物騒な宣戦布告 ページ26

田角と剣持君の会話に完全に置いてけぼりになっている。
けれど当の本人達はバチバチ。

…シリアスな場面に私ほど向かない人間はいないだろう。




「どうだい？Aちゃん。人は嘘で塗り固められている。
　彼もまだ君に隠している事や 嘘をついている事があるかもしれないよ」




田角は嫌な笑顔を浮かべながら私に語りかけた。
私はサッ、と剣持君に隠れる。







「…あの。私の方があなたより剣持君の事知ってますし。

　別に誰しも話したくない事の１つや２つあるでしょう？」







申し訳ないが、田角からの揺さぶりで疑心暗鬼になる程もろくない。

田角は腕を組み、つまらなさそうにため息をつく。
なに、試されてたの？




「赤の他人の言う事に揺さぶられるほど落ちぶれてません」





剣持君が私の手を掴んだ。
突然のことに驚いて彼を見る。

剣持君は田角の方を振り返った。





「…俺には心強い味方がいたみたいです。

　彼女と一緒にあなたをぶん殴ろうと思っていますが、いいですよね？」






わお、なんて物騒な宣戦布告。
そして質問ではなく確認だ。
…いや脅迫か。

剣持君の手を強く握り返す。





「そんでもってそこのお兄ちゃんも返してもらいますね」





隣でクスッと笑う声が聞こえた。

突然攫われ、助けられ、流れで一緒に戦っていただけだった。
最後の大一番。
なぜ葛葉さんが私を連れて行かせようとしたのかはわからない。

けれど、私にも田角を殴る理由ができた。




「ついでにあなたをぶん殴らせてください。ありがとうございます」


「まだ返事されてないでしょ」




こんな時もいいツッコミだね、剣持君。

私達は手を離し、戦闘態勢をとる。
拳銃はもう使わない。

葛葉さんのバットを握りしめた。
剣持君は部屋にあった傘を手に取る。


それを見て田角は胸ポケットから折り畳み式のナイフを持ち出した。
田角の銃は、先程の私の肝据わりショットで奇跡的に壊れている。

ワンチャン、スナイパー転職もありか。


「こら。自分の世界に入らないで」


考え事が剣持君にバレたみたいだ。
彼もエスパーになれる。





そうこうしているうちに、田角がお兄ちゃんを人質にしようとしていた。

が、しかし。




剣持君の動き出しは速かった。

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