優等生くんの裏の顔【knmc】

22:スパルタ ページ22

「おいしょぉおおお」



振り向いて身構えた時、白髪の青年が横からバットを振りかざした。
その瞳は真っ赤にギラついている。

返り血をものともせず、ひたすらバットを振りかざす。




「おねーさん、これ一個貸したげるから自衛しな」




青年は2本持っていたバットのうちの1本を私の方に投げた。
先端には釘が複数刺さっている。

…殺人用バットかな。

これで殴られたらひとたまりもないだろう。



「使いたくねーなら別にいいけど、もちさんに迷惑かけんなよ」


「葛葉！余計なこと、言ってんじゃねぇ！」



剣持君が遠くから敵を殴りながら返事をする。
よく聞こえたな。

ツッコむ剣持君にも疲れが見えてきている。


…そりゃ、こんだけいればな。


私は葛葉？さんにお礼を言ってバットを握った。



「おも…」



意外に重みがある木製バット。
あくまでも、自衛の術だけでいい。

自ら敵を倒しに行く必要はない。



頭ではわかっているが、なんだろうか。
不思議と気分が高揚する。

興奮しているだけか、本能なのか。



自問自答している間も敵は待ってくれない。
何人かが迫って来ている。




「今度は助けねーぞ」




…くぅ、なんてスパルタなんだ。


葛葉さんの助けない発言で覚悟を決めた。
ついこの前まで、平々凡々な女子高生だったというのに。





「もぉお！日常返せやぁああ！！」





非日常への怒りを込めてバットを振る。
バゴ、と嫌な音。感触がした。




「か弱い乙女に何させるんじゃぁあい！」


「ハッハッハッ！いいねぇ！」




隣で葛葉さんも豪快に笑いながら戦っている。

徐々に減っていく敵の数。
それと同時に溜まっていく疲労。



…けれど。



「＿＿ こんなっ！意味わかんないところにぃ！

　急に連れてっ、来られてぇ！！



　お前らの身勝手に巻き込むんじゃねーよっ！」












立ち塞がる大人達に声を枯らしながら叫んだ。









子供の。私の意志を吠える。

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