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「 あー、だりい... 」
朝の通学路でそう愚痴を零せば幼馴染の大ちゃんが俺の頭をペシっと叩いた。
「 そんな言葉遣いするんじゃありません！」
ふざけながら俺に説教する大ちゃんを見てお前は俺のオカンかとツッコみたくなる。
今年で高校二年生になる俺等。
10年以上一緒にいるコイツは俺の事をよく分かっていると思う。
でもそんなコイツでも一つだけ分からないことがあるんだ。
「 お前あれから何ヶ月経つんだっけ 」
「 あー...今の彼女と付き合って2ヶ月半だから3ヶ月くらいかな 」
「 ふーん...楽しい？」
自分から聞いてきたくせにさほど興味がそない様素振りを見せて。
楽しい？なんて恋人に関しての質問じゃねえだろ。
大ちゃんは時々どこか遠くを見詰めているような、寂しげな表情を見せる。
いつもの明るい彼からは考えられない表情。
それを見せるのは決まって俺が彼女の話をする時かあの時の話をする時だ。
いつものことだから気にせず二人でゆっくりと歩いていると、後ろから後輩の女の子が駆け寄ってくる。
「 有岡先輩！おはようございますっ 」
彼女はニコニコと可愛らしい笑顔を見せ、大ちゃんに挨拶をする。
大ちゃんのファンで有名な一年生の可愛い女の子。
「 おはよう！今日も可愛いね！」
大ちゃんが太陽のような明るい笑顔で手を振り返せばボフンっと顔を赤く染める後輩ちゃん。
大ちゃんはこういうとこがなぁ、
明るい笑顔と可愛らしいその顔でモテまくっている大ちゃん。
でも正直俺も負けてはいない。
まあ、俺には彼女が出来てから前ほどモテなくなったけど。
「 山田先輩もおはようございます！」
「 おはよ 」
軽く挨拶をして甘い笑みを浮かべれば周りを歩いていた女子たちがキャーキャーと黄色い声をあげる。
それを見た大ちゃんが横から俺の腕をバシバシと叩いてくる。
「 今日もモッテモテだね〜涼介くんっ♡ 」
「 キモいわやめろ 」
俺がそう一言放つと もう、いじわるぅ！とかなんとか一人でキモい演技を続けていた。
そんな大ちゃんはもう無視してさっさと学校への道を急ぐ。
大ちゃんに叩かれていた左腕にはあの時の傷が残っている。
傷が痛む度に俺はあの日になにか大切な忘れ物をしてきたのではないかと思わされる。
ぎゅっと右手で左腕の傷がある辺りを押さえれば胸の奥がツキンと痛む。
晴れ渡る空を見上げれば何かが始まる予感がした。
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作者名：かすたーどばにら | 作成日時：2018年8月22日 17時
